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銀行の常識は社会の非常識か? その4 振込手数料は高すぎないか
銀行の振込手数料に対する世間の反発は意外に根強い。宅配便が集荷・輸送・配達・再配達という涙ぐましい努力をしながら得ている配送手数料と銀行が電信で発信するだけの手数料の金額差が精々2倍程度なのである(宅配便の料金設定は非常に幅が広いので一概には言えないが、クール便等の扱いでなく軽量であればこんなものである)。
【前回は】銀行の常識は社会の非常識か? その3 両替有料化にみる銀行の体質
片や配送業者は「もう無理です」と大口配送先に泣きついて値上げ交渉を始めている。我々利用者も配達員の窮状を耳にして、再配達などさせられないなという気持ちになって、宅配便の到着日時を気にする人も多くなったという。現物が直に人から人に渡って、運送車両に乗せられ、途中で乗せ換えられて、最後にやっと受取人のもとに配達されるのである。
これに対して銀行の振り込みは相手先情報に誤りがない限り、受付銀行が発信すると1時間も経たないで受取人の口座に入金している。マンパワーが必要なのは発信する時だけである。一度無事に振り込みがされた受取人には、2回目以降特に心配はない。確かに銀行は共同運行している全国銀行データ通信システムの設立と運営に莫大な経費が掛かっているので止むを得ない料金なのだというが、関係設備に経費が掛かるのはどんな業界も同じである。宅配業者も配送車両、配送拠点に個々の事業者が膨大な経費を掛けているのだ。
大体にして、銀行の3大業務は預金と融資と為替である。看板業務の一つなのだ。事業に係る代金決済であれば、受取人(物品であれば販売業者)に振込する際に振込手数料を差っ引きすることが当然のように行われているが、システムとして定着したからと言って、みんなが納得しているとは限らない。社会に定着していることと、銀行という存在があまりに大きすぎて文句の言いようもないため表面化していないが、実は経理担当者の周辺には振込手数料に対する静かな怨念が渦巻いている。
例えば三井住友銀行の平成29年3月期有価証券報告書では、連結決算の当期純利益が7,457億円であるのに対して、内国為替業務による収益は1,164億円(同業務に係る費用292億円が別途発生している)となっている。内国為替業務収益の内訳は不明であるが大方が振込手数料であるとすると、当期純利益の10%前後は振込手数料収入が占めていることになる。非常に美味しい手数料なのだ。
どんな商品・サービスであっても、市場機能が発揮される競争が成り立っていなければ、いびつな価格が形成されてしまうことは歴史を見れば明らかだ。銀行が横並びの振込手数料を享受できる状態はそんなに続かない。今の振込手数料を過去のものにする斬新な発想による革新はブロックチェーンを代表格にして、すぐそこまで迫っている。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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