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東北大、透明で曲がる太陽電池を開発 発電効率は世界最高性能
TMDを用いた透明フレキシブル太陽電池(写真:東北大学発表資料より)[写真拡大]
東北大学大学院工学研究科の加藤俊顕准教授らは21日、透明で曲げられるシートを使った太陽電池を開発したと発表した。シート材料には、原子オーダーの厚みを持つ遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を使用する。発電効率は、同様の太陽電池では世界最高性能となる0.7%を達成。車のフロントガラスや携帯電話のディスプレイなどに貼れる太陽電池の開発につながる可能性がある。
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●次世代太陽光発電に期待
東京商工リサーチは7日、1~8月の太陽光関連事業者の倒産は59件となり、前年同期比63.9%増となったと発表。2012年に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が施行され、多くの企業が太陽光関連事業に参入したが、買取価格の段階的な引き下げに伴って市場拡大のペースは鈍化している。
5月には、世界の太陽光発電を牽引してきた独ソーラーワールドが倒産。13日には、パナソニックが太陽光パネルの材料生産撤退を発表している。背景には、中国などの安価なパネルとの価格競争の激化があり、価格以外の付加価値の創造が急務である。
●遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)とは
遷移金属(モリブデンやタングステン)とカルコゲン原子(硫黄やセレン)から構成される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、半導体の特性を持つ。このことから、太陽電池への応用が期待でき、本研究に着手したという。
加えて、TMDの厚みは原子オーダーであり、90%以上の光を透過。透明で曲がる太陽電池が実現できれば、新たな付加価値が創造できるであろう。例えば、車のフロントガラス、ビルの窓、スマホのディスプレイ表面、さらには人体の皮膚等あらゆる場所へ太陽電池を設置し、補助電源として活用することが考えられる。
●製品化を意識した製造プロセス
太陽電池の構造は、2つの異種電極間にTMDを挟み、TMDと電極との接合状態を最適化するだけのシンプルなショットキー型とした。その構造を透明なフレキシブル基盤の上に形成することで、透明で曲がる太陽電池を実現している。
電極の構造を最適化した結果、透明なTMDを用いた太陽電池では世界最高の発電効率0.7%を達成。従来の太陽電池は光を通さない黒色であり、発電効率は高いが、価格競争に陥りやすかった。他方、透明な太陽電池は、有効に利用できる光エネルギーが小さく、発電効率は低いが、透明性やフレキシブル性という新たな付加価値を生む。
加えて、電極の形状と種類を最適化するだけのシンプルな構造のため、太陽電池の実用化に向け課題であった大面積化にも対応。1センチメートル四方の基板上に太陽電池を敷き詰めることに成功した。
●太陽電池(東北大学、TMD太陽電池)のテクノロジー
今回の研究で実現した透明で曲げられる太陽電池は、新たな付加価値を創造するであろう。先ず、薄さとフレキシブル性は、形状に依存しない太陽電池の実現を意味し、低電力デバイスの電源に成りえる。次に、透明にできることで適用範囲は広がる一方、透明である必要がない場合には、発電効率を上げることも可能になると思われる。
加えて、電極の形状と種類を最適化するだけのシンプルな構造であり、太陽電池の大面積化を可能にするであろう。また、電極の形状や種類のさらなる研究でノウハウが蓄積されれば、模倣困難性をも生む可能性がある。
本研究成果は日本時間の20日、英国科学雑誌Scientific Reports(電子版)に掲載された。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
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