根気強いランナー、実は長距離ではなく短距離ランナー?

2017年8月17日 06:57

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■桐生の活躍と停滞

 先日行われた世界陸上400メートルリレーで日本チームが銅メダルを獲得したことは記憶に新しい。昨年のリオオリンピックでも日本チームは銀メダルを獲得しており、もはやリレーでのメダルは「奇跡」ではなくなった。そんな日本チームの中で輝きを見せているのがいずれも第3走者を任された桐生祥秀だ。彼が注目されたのは高校生の頃である。

 高校生にしていきなり10秒01を記録し、日本人初の9秒台ランナーになるのも秒読みと言われていたほどだった。その後東洋大学に進学し、ずっと日本短距離界をけん引する働きを見せているものの自己ベストは更新できず。昨年自己ベストタイの10秒01を記録するもいまだに10秒台の壁は越えられていない。しかし地道に努力を続けている結果が日本代表で第3走者を任されていることにつながっている。

■長距離走者と短距離走者はどっちが忍耐強いのか

 ここで話は少し変わるが、よく長距離走者は忍耐力のあるランナーが、短距離走者は才能があるランナーがやる競技と言われることがある。しかし果たしてそうだろうかという疑問が残る。例えば長距離ランナーは走ればタイムが伸びることがよくある。レースや練習では確かに忍耐力が重要になってくるが「走った距離」が結果に結びつく可能性は大きい。しかし短距離走者はそうではない。何年間も地道な努力を重ねていたとしても0.01秒すら伸びないこともある。

 それだけならいいがタイムが落ちることすらある。数年前の自分と比べて確実に「強くなっている」という実感を持つことができるのにタイムは落ちているという矛盾に嫌気がさすランナーは少なくない。それにもかかわらずその競技を続けられるというのは、ある意味忍耐力が備わっているといって過言ではないだろう。

■桐生の忍耐力

 それを踏まえれば、桐生の忍耐力は計り知れないものではないかと思う。「数学者が難問を一生かけても解けない」ようなそんな感覚に似ている。しかも彼は常にマスコミにさらされている。「高校生の頃がピーク」なんて言われかねない状況下にいながらもけなげに走り続けている。

 そして長年タイムが伸びない状態が続くと新たに出てきた選手に脚光が集まり、今ではサニブラウンに期待している国民の方が多いのではないかと思う。それでも希望を持ち続け走り続ける桐生にはエールを送りたい。彼の忍耐力が身を結び、10秒という壁をぶち破ったとき更なる進化が期待できるのだろう。それが個人での100メートルメダルかもしれないし、リレーでの金メダルかもしれない。いずれにせよ彼に期待せずにはいられない。

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