有休取得を増やすためには「感情の要素」が大きい

2017年8月7日 16:53

印刷

 ある調査によると、ビジネスパーソンの33.6%が、「職場に休める雰囲気がないため、有給休暇を取りづらい」と感じているという結果がありました。
 この他の休暇を取りづらい理由としても、「自分が休むと、同僚が多く働くことになるから」が22.9%、「上司・同僚が有給休暇を取らないから」が22.3%など、周囲の様子が気になるという意見が目立ったということです。

【こちらも】「日本人の有休消化が進まない理由」を聞いて思うこと

 また、同僚が有給休暇を取得した際にどう感じるのかを聞いたところ、「取れるならどんどん取った方がいい」が34.6%とトップで、さらに他人の休暇取得でイライラする場面があるかと聞いたところ、「イライラすることはない」と回答した人が49.6%とこちらもトップで、多くの人が寛容な姿勢だということがわかったそうです。
 ただし、2位の回答は「繁忙期に堂々と休む」の24.2%で、これを役職別に見ると一般社員は21.7%に留まっているのに対し、管理職は34.9%が不快感を示していてイライラする傾向が強いということです。「休みにくい雰囲気」には、このあたりが影響しているのかもしれません。

 このイライラの部分について、私はもう少し寛容であってもよいのではないかとは思うものの、“繁忙期”“堂々と”となると、その度合いによって感じ方は大きく変わるだろうと思います。結局は主観なので、ここにはかなりの個人差があるでしょう。

 自分だったらどうだろうかと考えてみると、例えば納期や締め切り間際であったり、一人欠けるだけで段取りが狂うほど切羽詰まっていたり、そういう状況であったとするとやはりイライラはするだろうと思います。
 それでもその休暇が前から決まっていたものであるとか、急な病気などでやむを得ないものであるとか、休暇前に頑張ってできるだけのことをしてくれていたとか、気をつかっている様子だったとか、そういう気分的なことでイライラの程度はたぶんかなり違います。仕事は調整してどうにかするでしょうし、一人が休んだからといってもよほどのことがない限りはどうにかなりますから、このイライラというのは、仕事上の問題よりもまさに感情の問題です。

 急な病気や身内の不幸や、その他やむを得ない事情ならば許せるのに、遊びやレジャーが理由だと何となくイライラしたり、前もって決まっていることならよくても、急な話だとやっぱりイライラしたりするのでしょう。
 感情には個人差がありますから、イライラを感じやすい上司の職場であれば、「休める雰囲気がない」となってしまうでしょう。

 こうやって考えると、「職場に休める雰囲気がない」という原因は、ほとんどが感情から、それも管理職の態度から始まっていることが多いようです。また、この調査では寛容な人の方が多いことから見ると、それもわりと一部の人に原因があるのではないでしょうか。

 このように、感情が原因ということは、何か論理的な説明や意識付けだけで変えていくのは難しいということになります。この調査でも、現状を改善するために必要なことは、「会社の制度を変えるべき」という回答が「個々の意識を変える」を大きく上回ったということです。

 仕組みで強制しなければ進展しないことはわかりましたが、この「感情」の部分はもう少しどうにかならないのかだろうかと思います。
 なぜそんなに休むことを好まない人がいるのか、この点はもう少し考えていかなければならない課題だと感じます。

※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事