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ガス自由化で得られる4つのメリット
【連載1回目】「電力自由化」に続くかたちで、2017年4月から始まった「ガス自由化」。「ガス自由化」によって、私たちの生活は何が変わるのでしょうか? そもそも「ガス自由化」とは、何を目的に、どのような経緯でスタートしたのでしょうか?本連載では、「ガス自由化」と今後のエネルギー業界の動向を解説します。
本連載は2017年6月に発売した江田健二氏の書籍『かんたん解説!! 1時間でわかる ガス自由化入門』を許可を得て、編集部にて再編集し掲載しています。via https://www.amazon.co.jp/かんたん解説-1時間でわかる-ガス自由化入門-NextPublishing-江田-ebook/dp/B071J7C1L9/ref=tmm_kin_swatch_0?_encoding=UTF8&qid=&sr=
ガスにはどんな種類があるの?
普段私たちが使っているガスは、全て同じものではなく、「都市ガス」「LPガス」(プロパンガス)と、大まかに2種類に分けることができます。そのほかに「簡易ガス」という、聞きなれない珍しい類型もあります。
まずは一般的な「都市ガス」と「LPガス」について概要をご紹介します。
都市ガスとLPガスの違いは何でしょうか? 1つ目としては、成分が挙げられます。都市ガスは、メタンを主な成分に持つ天然ガスです。一方でLPガスは、プロパン・ブタンを主成分に持つ液化石油ガスです。例えるなら、同じ肉でも豚肉と鶏肉の栄養成分が異なるイメージです。
都市ガスとLPガスは主な成分が違いますので、保有している熱量も異なります。都市ガスの火力(熱量/カロリー)は1立方メートルあたり、約1万1000 Kcal です。LPガスは1立方メートルあたり約2万4000 Kcal です。つまり、LPガスは都市ガスに比べて2倍以上の火力があるのです。
Photo credit: Bilfinger via Visual hunt / CC BY-ND
供給方法に関しても都市ガスとLPガスは異なります。
都市ガスは道路などの下にある「導管」を通じて供給されています。
LPガスは事業者が、ガスボンベをトラックなどに積んで家庭や施設に直接配送します。ガスボンベですから、当然決められた容量しかガスは入っていません。そのため、人の手による定期的な入れ替えやガス設備の定期点検が必要です。
ですからLPガスは、都市ガスよりも高い熱量を持っているという利点がある反面、手間がかかり価格が高くなってしまう傾向にあります。
電気のように都市ガスの導管が全国津々浦々に整備されることを希望する声もありますが、人口が少ない地域においては経済合理性からも、なかなか手が回っていないのが現状です。
ガス自由化の目的とメリットは?
そもそも、なぜ今までガスは全面的に自由化されてこなかったのでしょうか?
それは、「1社に任せていたほうが、効率がよい」という考えからです。各地域を特定の会社に任せることによって、過度な競争が起こらず、安定的にガス事業を育成することができます。
例えば、導管などのインフラを整備するための設備投資コストは大変巨額です。たくさん作るほど安くなる「規模の経済」を働かせることで、結局は利用者へのメリットが大きくなります。
また、過度な競争がない状況が結果的に安心・安定したガス供給を下支えしてきたと考えられます。ガス会社の日頃からのしっかりとした準備やメンテナンスが、災害時などのスピーディーな復旧の要因にもなっていると考えられます。技術やノウハウが成熟していない段階で複数社が同じビジネスを始めると、他社に料金で負けないために安全性を疎かにする企業が出てきてしまう可能性もあります。
ガス事業においても、一気に自由化すれば、ガス供給が頻繁に止まるような事態になっていたかもしれません。
自由化を実施するということは、このようなリスクを背負う懸念があるということです。ただ、最近は技術的な成熟も進み、かつインフラ整備もある程度安定してきているので、多くの企業が自由にガス事業に参入することのメリットが相対的に大きくなってきました。
そこで、国も自由化に向けて舵をきったというわけです。
また、安全面や安定性のコアな部分に関しては、既存のガス事業者が継続して担当しますし、政策的な枠組みでセーフティネットを構築しています。
Photo credit: Jonathan Rolande via Visual Hunt / CC BY
ガス自由化が実施された目的を整理すると、大きく次の4つが挙げられます。
1 天然ガスの安定供給の確保
ガス導管網の新規整備や相互接続により、災害時供給の強靱化を含め、天然ガスを安定的に供給する体制を整える。
2 ガス料金を最大限抑制
天然ガスの調達や小売サービスの競争を通じ、ガス料金を最大限抑制し、国民生活を改善する。
3 利用メニューの多様化と事業機会拡大
利用者が、都市ガス会社や料金メニューを多様な選択肢から選べるようにし、他業種からの参入、都市ガス会社の他エリアへの事業拡大等を通じ、イノベーションを起こす。
4 天然ガス利用方法の拡大
導管網の新規整備、潜在的なニーズを引き出すサービス、燃料電池やコージェネレーションなど新たな利用方法を提案できる事業者の参入を促す。
多様性が生まれる料金プラン
これまで、ガス料金プランはオプションなどの種類が少なく、多様なニーズを満たすことはできませんでした。
しかし、異業種企業が参入することにより、ポイントサービスや定額制など、様々な形の料金プランが生まれると期待できます。消費者は、それぞれのガス会社が工夫して提案する料金プラン(料金メニュー)の中から、どれが自分にとってよいプランかを比較検討し、好きなサービスを自由に選ぶことができます。
また、2016年の電力自由化に続き、今回のガス自由化で電気とガスの両方が全面自由化されたことになるので、必然的に「エネルギー事業の垣根」がなくなります。これはつまり、例えば「電気とガスのセット割引」(電気とガスの供給をセットで同じ会社と契約すれば、料金が安くなるというサービス)といったことも可能になるということです。
この電気とガスのセット割引を「デュアルフュエル」というのですが、欧米の一部の国、特にイギリスにおいては一般的な形態であり、2014年時点では家庭需要家の内、7割以上がデュアルフュエルを選択しています。デュアルフュエルはガスと電気を別々に契約するよりもお得になる、という消費者にとってはありがたいサービスなので、今後日本でも普及していくかもしれません。
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ガス供給の安全性は問題ない?
「安全性」についてはどうでしょうか。ガス事業において、安全性の確保は最優先事項です。ガスは電気以上に取り扱いを間違えると、大事故につながる危険性が高いからです。したがって、ガス事業におけるシステム改変においては慎重に物事を進める必要があります。
そうした観点から、ガス管の点検や緊急対応などの保安・管理は、これまでどおり都市ガス会社が行うことになっています。したがって、安全性についても、先に述べた供給の安定性と同様、今までと全く変わりません。
また、「もし新しく契約したガス会社が倒産したらどうしよう?」と考える方もいるかと思います。ガスは社会生活を営む上でなくてはならない基盤であり、使えなくなると大惨事です。そのため、そうした状況に対応できるよう、前述したようにセーフティネットがきちんと用意されています。
具体的には、仮に契約しているガス会社が倒産などのトラブルに見舞われても、元々のインフラ自体を敷設した都市ガス会社がバックアップするようになっていますので安心してください。
(次回に続く)
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