AKB総選挙の意味を再考してみる

2017年6月4日 21:31

印刷

『AKBGにいる以上、総選挙は避けて通ることはできない』

【こちらも】混迷し形骸化したAKB総選挙に明日はあるか?

 これは、先日雑誌での松井珠理奈(SKE48)、宮脇咲良(HKT48)の対談の中で飛び出したセリフである。今、総選挙戦真っ最中ではあるが、これまで全員参加が原則だった総選挙が、任意立候補制になったのが3年前。以来、年々、立候補辞退するメンバーは増えている。

 今回も、NMBの山本彩、NGT兼任の柏木由紀、選挙の強さに定評のあるAKB武藤十夢といったメンバーが選挙を辞退している。

 多くのメンバーが口をそろえているが、総選挙は本当にメンタルにくるものだという。

 自分たちの人気が数字で表されてしまうということ、日ごろ一緒に公演に出ている仲間たちと争わねばならないこと、ファン、運営、マネージャーなどからの様々なプレッシャーもあるだろうし、発表の際、名前が呼ばれようが呼ばれまいが、長時間、観客の前でただ座っているだけという肉体的な疲労もある。

 しかし、それでも多くの手間暇と、投票券のつくCDの売り上げを考えると、出来る限り参加して欲しいというのが運営の考え方だろう。そういう意味では、指原莉乃直系ともいえる宮脇や、秋元康氏子のお気に入りである松井珠理奈の口からそういう発言が出てくるのは納得できるし、どうしようもなく正論といえる。

 しかしながら、この総選挙というシステム自体、本来のAKB立ち上げの趣旨からいえば必要のない、ある意味有害(?)ともいえるイベントであることも確かだ。

 本来、AKBは、劇場をショーウィンドウにして、歌やダンスのスキルを磨きつつ、プロダクション関係者や各プロデューサーに見つけてもらい、メンバー個人個人の夢を追いかけるプロジェクトであって、グループ内の序列付けをするものではなかったはずなのだ。

 それでも、選挙が行われたのは、当時、絶対的なセンターであった前田敦子へのファンの感情などを考慮し、1曲限定で選挙結果を元に序列を組もうとして行われたものだった。そのため、センターは前田と対抗馬の大島優子の2強争いは焦点になったが、たとえ大島優子が勝っても、序列は前田のほうが上だったのは間違いない。

 それがいつの間にか、序列に直接結びつくものになり、メンバーたちを精神的に縛りあげ、自由な活動を阻害するものになってきたのは、本来、AKBが持っていたクリエイティブな空気を、優等生揃いの没個性、その副産物としてのイロモノキャラ集団に変えてしまっている現実も把握すべきだろう。

 実際、昨年までの話だが、総選挙を辞退したメンバーは、本人の意思に関係なく、卒業を噂され、不出馬を「逃げ」となじられ、ともすれば卒業を強制される空気を作られてしまっている。大勢の、様々な個性、魅力のあるメンバーが集まるのがAKBGの魅力の一つであるはずなのに、この序列・順位付けで活動が固定化してしまうのは少々残念な気もする。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事