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「おまとめローン」が孕む危うさ
『●●銀行の“おまとめローン”を活用して身軽になりませんか』といったCMの類いを、目に耳にする。日々の生活で不足する資金の借り入れを貸金業者から行っている人が少なくない証しといえる。
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債務整理絡みの民事訴訟を手掛ける弁護士によると「2000年以降でみると自己破産件数は04年の約25万件をピークに減少傾向にあるが、未だ7-8万件が年々発生している。自己破産予備軍の多重債務者の数となると正確には把握しきれていない」という。
多重債務者に向けて「おまとめローン」の営業は行われている。確かに消費者金融など貸金業法の規制下の業者からの借入がつのり「ニッチモサッチモいかなくなる」寸前の債務者が「おまとめローン」を活用し、借金を「低利」「返済期間の長い」銀行借り入れにまとめれば、断崖絶壁の一歩手前で踏み止まることは可能。しかし、先の弁護士はこうも言った。「一度身に染みついた借金体質は、例えはよくないが“一度麻薬に頼ってしまった”ケースに酷似している」。
おまとめローンに駆け込んだ人が、更に借金を重ねかねないというのである。誰が貸してくれるというのか。貸金業者の間には「信用ネットワーク」があり、おまとめローン組は容易にキャッチできるはず。
だが、「法律に抜け道は常」。貸金業法も「ザル」法の側面がある。「貸付金額は年収の3分の1を超えてはならない」と上限を定めているが、一方で事情の如何にかかわらず「一度貸金がゼロになれば、年収の3分の1までの再融資が可能」。おまとめローンで借入ゼロになれば再度借り入れを行うことがOKとなる。一度「借金体質が身につくと」云々の危惧が指摘される要因である。
多重債務者の増加が懸念される、時代的な背景もある。日銀による「マイナス金利」政策の導入による超低金利の深刻さは、地方銀行などの中小金融機関の経営を嵐に晒している。大手銀行は勝ち組で居続けるために張り巡らした支店網を介し住宅ローンは元より、地銀の営業地盤に容赦なく手を突っ込んでいる。おまとめローンの看板を掲げていない大垣共立銀行の土屋嶢頭取は、「勝てない金利競争はしない」と言い切る。しかし大手銀行に侵食される地銀の中には薄利でもリスクに立ち向かい「おまとめローン+α」の貸し出しに生き残りを賭けるところも現に出ている。多重債務者に救いの手を差し伸べると同時に多重債務者づくりの二股商売を行っている、と批判されても仕方がない。
件の弁護士は「おまとめローンで一息入れた債務者が再び消費者金融などから融資を受けられる、現行の法体制を見直す必要があろう」とする。
5月3日付けの朝日新聞は、おまとめローンで1000万円近い借金を一本化した後にさらに消費者金融などで借金を重ね「借金総額が年収の3倍超の2600万円まで膨らんだケースもある」と紹介している。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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