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拡大基調にある電子お薬手帳サービス 2025年には16年の9.6倍に拡大
電子お薬手帳サービスは、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT 総合戦略本部)が2010 年5月に策定した「新たな情報通信技術戦略(新IT 戦略)」をきっかけに議論が開始された。翌年2011年に東日本大震災が発生し、医療機関や薬局も被災して保存していた多くのカルテが失われたことから、お薬手帳の有用性が示された。しかし、紙のお薬手帳は常に携帯している人が少なく、より携帯性の強いスマートフォンで管理する電子化のメリットが注目されるようになった。
2012年9月には保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)により、電子お薬手帳のデータフォーマット仕様書が公開され、以降さまざまな電子お薬手帳サービスが登場している。また政府は電子版お薬手帳サービスの普及を積極的に推進しており、2015年6月30日に閣議決定した「日本再興戦略2015」において、「本年度中に電子版お薬手帳の更なる機能性の向上について検討を行い、2018 年度までを目標とする医療情報連携ネットワークの全国各地への普及と併せて国民への普及を進める。」としており、薬局への導入も進んでいる。
シード・プランニングは、国内の電子お薬手帳市場の将来展望に関する調査を実施し、その結果をまとめまた。それによると、2016年の市場規模7.1億円と推計した。今後、政府の医療情報の電子化の推進や薬剤師・薬局のかかりつけ機能の強化を背景に、ICT を活用した服薬情報の一元的・継続的把握、電子処方せんや医療連携ネットワークとの連携、医療機関等への利用拡大等、電子お薬手帳を軸に様々なデータが一元的に管理されることとなる。このようなサービスの広がりから2025年には2016年比9.6倍の68.2億円市場に拡大すると予測している。
電子お薬手帳アプリは、スマートフォン保有率の高い20代~40代のうち、特に健康意識の高い30代~40代を中心に利用されている。その中でも乳幼児を持つ母親や高齢者家族のいる世代によく利用されている。しかし、保険薬局に来院する患者の約半数は65 歳以上の高齢者で、スマートフォン保有率が低く、電子お薬手帳アプリの普及が進んでいないのが現状である。
調査では、サービス事業者および導入薬局のヒアリング調査より、利用者数を積み上げた結果、2016年の利用者数は112万人と推計した。厚生労働省の「患者調査」によると、2014年の外来患者数は病院、一般診療所、歯科診療所を含め約724 万人、入院患者数は約130万人と推計されている。これらの患者数を母数とするならば、2016年の電子お薬手帳サービスの普及率は約13%におよぶ。しかし、人口比で見た比率は約1%と、まだまだ普及期とはいえない状況である。
一方、紙のお薬手帳は、患者の60%~70%に利用されているといわれる。今後保険薬局へのサービス導入が進み利用環境が整備され、患者自身が自身の医療・健康情報を自己管理する意識が根付けば、紙のお薬手帳並みの普及が見込まれる。そのため2025年には入院・外来患者数の半数の約422万人が利用すると予測した。(編集担当:慶尾六郎)
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