動き出した水素社会、鳥取で全国初の水素エネルギー一体型プロジェクト

2017年2月5日 10:30

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記事提供元:エコノミックニュース

水素社会の実現に向け、鳥取県で水素エネルギーの教育拠点「鳥取すいそ学びうむ (とっとり水素学習館)」が誕生。4月にオープンし、水素エネルギー利活用の提案と啓発を行う。

水素社会の実現に向け、鳥取県で水素エネルギーの教育拠点「鳥取すいそ学びうむ (とっとり水素学習館)」が誕生。4月にオープンし、水素エネルギー利活用の提案と啓発を行う。[写真拡大]

 近年、石油に代わる次世代エネルギーとして水素に期待が集まっている。水素がこれほどまでに注目されている大きな理由は、ただ単に化石燃料よりもクリーンなエネルギーであるということだけではない。

 クリーンなエネルギーとして大規模に太陽光発電を並べたメガソーラーや、風力発電を並べたウィンドファームなどが知られているが、日射や風の状況次第で発電量が影響を受けるこれらの発電だけでは、必要な時に必要なだけ電力を供給するという安定したエネルギー供給は実現しない。一方、水素は太陽光発電や風力発電などクリーンな電力を用いて水を分解させて作ることが出来るほか、バイオエタノールなどの他の方法からも取り出せるなど多様な方法で入手可能である。さらに、電気やバイオ資源とは異なり大量に貯め、比較的簡単に輸送することが出来る。

 また、火力発電などの場合は化石燃料からの発電効率がおよそ35%程度であるのに対し、水素を利用した燃料電池では、約80%を利用する事ができるという高効率。そして何といっても、現在、日本の水素エネルギー開発は世界でもトップクラスで、今後、日本が他の先進諸国を抑えて世界の市場をリードできる一大産業となりうる可能性を秘めていることだ。ちなみに、日本国内での燃料電池分野での特許出願数はダントツで世界トップだ。

 すでに定置用燃料電池や燃料電池自動車(FCV) は日本社会に普及し始めている。中でも、「エネファーム」と呼ばれる家庭用燃料電池は2015年末時点で15万台以上が普及しており、2020年には140万台の普及が見込まれている、一大成長市場となっている。さらに業務・産業用燃料電池の開発も進み、分散型電源としての水素利用も拡大する見込みだ。

 FCVも、2014年の12月にトヨタ自動車が世界初の量産型FCV「MIRAI」を発売したのを皮切りに、16年3月には本田技研工業も量産型FCV「CLARITY FUEL CELL」を発売。今後はFCバスやFCフォークリフト、船舶などにも適用分野が拡大されていく。

 また、水素を安価に製造する技術の開発も活発になってきている。福島県の貴金属表面処理加工会社の山王と東京工業大学、及び産業技術総合研究所の共同研究で、金属めっき技術を応用して低コストで水素を製造できる「金属複合水素透過膜」の特許を獲得。実用化すれば、燃料電池や水素ステーションのコストを大幅に低減することができるので、水素社会を加速させる推進力の一つになることが期待できる。他にも、北海道では牛ふんを発酵させたバイオガスで水素を製造する日本初の「水素ファーム」が誕生するなど、水素エネルギー開発は多様な分野で活発に動き出しているのだ。

 さらに、鳥取県では、より具体的に水素社会の構築を想定したプロジェクトも動き出した。

 鳥取県と鳥取ガス株式会社、積水ハウス、本田技研工業の4者は、鳥取県の「水素エネルギー実証(環境教育)拠点整備プロジェクト」を推進する協定に基づいて、水素エネルギーの教育拠点として「鳥取すいそ学びうむ (とっとり水素学習館)」を整備。1月27日に完成セレモニーを開催した。同プロジェクトは、水素ステーションと住宅、FCVを 水素を通じて一体整備する全国初のプロジェクトで「スマート水素ステーション」を日本海側、かつ中国地方で初めて設置するなど、水素エネルギー利活用の提案と啓発を行っていく。

 鳥取県は将来の水素社会の実現に向けた再生可能エネルギーや水素エネルギーの活用に積極的であり、本田技研工業は、国内の二大FCVメーカーの一つだ。

 積水ハウスは大手住宅メーカーの中でも、早くから水素社会を見据えた住宅商品の開発に力を入れており、燃料電池も積極導入してきたことで知られ、既に戸建住宅の半数近くに導入している。太陽光や燃料電池を採用したネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)も戸建住宅の7割を占めるなど、業界を先導している。ZEHなどの環境配慮型住宅で先行する同社を含む4者が描く「水素の暮らし」を同施設では体験できる。

 日本国内のエネルギー事情だけでなく、諸外国も注目する水素エネルギー。日本経済の未来のためにも、他国に先駆けていち早く水素社会を実現し、世界の水素市場でのイニシアチブを確立したいものだ。(編集担当:石井絢子)

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