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「ゆでガエルにヘビを放り込む」があまりうまくいかなかったこと
あるウェブ記事の見出しに「ゆでガエルの意識を変えるのは簡単だ。ヘビを放り込めばいい」とあるのを目にしました。三菱ケミカルHD会長の小林喜光氏がおっしゃったことのようです。
記事を拝見すると、「ヘビを放り込む」は決して人を入れるということばかりでなく、“事業方針の転換”というようなことも含んでいて、なるほどその通りだと思います。
ただ、私が実際に現場で体験することでは、「ヘビ」になるのは今まで自分たちの組織にはいなかったタイプの人材、社外の専門人材や優秀人材を指していることが圧倒的に多く、その人たちが短期間で劇的に組織変革をしてくれるというような救世主の働きを期待しています。
それが期待通りに進むケースはあるにはありますが、それほどにはうまくいかなかったケース、さらにはまったく期待に反していたようなケースの方が、実は多いと感じます。
これはある会社でのことですが、その組織にとっては「ヘビ」に相当する、今まで自社にいなかったような経験を持った優秀な部長クラスの人材を採用したものの、それによって社内の「ゆでガエル」と言われていた人たちが、“敵の襲来”と察知してちょっと違う意味で目を覚まし、その部長を徹底的に攻撃して退職に追い込んでしまったということがありました。
「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」などということわざがあるように、弱い者でも追いつめられたり集団になったりすると強い者に反撃することがあるという典型の状況でした。
この団結力や執着心が仕事に向かえばどんなに良いかと思いますが、この時の学びは「どんな優秀な人材であっても“多勢に無勢”では変革が難しい」ということです。
また、これは別の会社でのことですが、やはり同じように「ヘビ」となることを期待した人材が、次第に周りに飼いならされて、結局同じゆでガエルの状態になってしまったということがありました。周囲からのフォローがなかったことも大きな要因ですが、たぶん、ヘビだと思った人材が実はそうではなかったということで、人材の見込み違いという問題があったのではないかと思いました。
このように「ゆでガエルにヘビを放り込む」とはいうものの、その人が本当にヘビになるのかどうかの見極めも必要ですし、仮にヘビであったとしても、一匹だけでは負けてしまうこともあるということで、これらの条件を満たすのは意外に難しいように思います。
タイプの違う人材を入れさえすれば、起死回生、一発逆転の変革ができると考えてしまう経営者はたくさんいます。ただ、そんな孤立無援の状況で力を発揮できる人は、ごくごく一部の少数派です。
その人材のレベルを見極め、孤立しないような組織体制を作り、周囲からもフォローをしていかなければ、せっかくの「ヘビを放り込む」が効果的にならないことが多々あります。
組織変革に起死回生も一発逆転もないことだけは、心に留めておく必要があるのだと思います。
※この記事は「会社と社員を円満につなげる人事の話」からの転載となります。元記事はこちら。
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