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クロスオーバーSUVとSUV、何が違う?2017年、市場を制するのは?
クロスオーバーSUVは世界の自動車市場を席巻、これが世界の自動車産業の大きなうねりだ。写真は2月から国内販売が始まる新型マツダCX-5、彫りが深くなって一層セクシーな印象になったエクステリアが印象的[写真拡大]
2015年から2016年、世界の自動車メーカーの売上を牽引する商品ベクトルは完全にクロスオーバーSUVに向いている。SUV、つまり「Sports Utility Vehicle」をどこかの国の大手マスコミが連発する翻訳調名詞を使って“多目的スポーツ車”などと言うつもりはないが、確かにクロスオーバーSUVは世界の自動車市場を席巻している。これが世界の自動車産業の大きなうねりだ。
しかしながら、そもそもSUVの概念は、非常に曖昧だ。世界的にSUVという名詞を使い出したのは1990年代の半ばだった。その頃、グローバルな意味で、それらしいクルマとしてJEEPグランド・チェロキーなどが挙げられた。が、北米、なかでも米国では、ピックアップトラックから派生したクロスカントリー型4WD車をも含めてSUVと呼んでいた。
米国でSUVという名のクルマは、米自動車税の独特な課税方法から生まれた、とする説が有力だ。その米国でSUVの始まりは、1963年の「Jeepワゴニア」だとされている。そして、1980年のクライスラー社Jeepチェロキーのヒットで乗用車ユーザーにSUVが認知された。それまでの4WD車はライトトラックと同じラダーフレーム構造だったのに対し、チェロキーはサブフレームを持つモノコック構造だった。
ただ、人気のチェロキー市場参入を目論んだGMやフォードは、簡単に開発でき、すぐに市場投入可能なコンパクトピックアップのフレームにハードトップボディを換装して発売。そして、それが売れた。そしてSUVをピックアップトラックの優遇税制に結びつけ、SUVのフレーム構造をウリに販売攻勢をかけた。つまり、米国自動車税制上、トラックの税金は安価であり、同じフレーム構造を持つ“SUVも同じ優遇が受けられるべき”と、業界が政府に働きかけた。結果、SUVもトラックとして分類されるようになった。「フレーム構造であること」、これが米国SUVの定義になった。トヨタのハイラックスサーフなどは、まさにこれに該当するモデルだった。
さて、冒頭の“クロスオーバーSUV”に戻る。果たしてこのカテゴリーに属するクルマの始祖は何だろう。恐らくだが、それは日本のクルマに違いない。1994年に登場した「トヨタRAV4」だ。完全なモノコックボディを持った2ドア+リアゲートを持った5ナンバーサイズのモデルだ。この成功を受けて、ホンダCR-V、スバル・フォレスターなどが追随する。ただ、これらモデルはその時代、まだ“クロスオーバーSUV”とは名乗っていない。未だ、そんな単語が無かったからだ。単にコンパクトな乗用四駆の一種として人気モデルとなった。が、しかし、これらのコンパクト四駆モデルは、クロスカントリー4WD車などヘビーデューティな走破性を持ったカテゴリーのクルマの呪縛から抜け出せていなかった。“四駆性能を前面に出していた”からだ。
そんな呪縛から解き放たれたモデルが、1997年にトヨタが発表した「ハリアー」だ。4ドアセダンのカムリのプラットフォームから派生したこのモデルは、FFと4WDをラインアップし、3リッターV6エンジン搭載車は、洗練された都会派の多目的車として大ヒットする。日本国内の盗難車ナンバー1になったほどの人気モデルになったのだ。北米ではレクサスブランドで売れた。
昔から本格的クロカン四駆を生産していたメルセデスは別にして、この頃から、メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲンやアウディといったドイツ四天王も続々にソフィスティケイトされお洒落な四駆モデルを発表する。そして、ポルシェがカイエンを発表して、クロスオーバーSUVの乱れ咲きが始まる。遂にはジャガーやベントレーといったラグジュアリーブランドからも登場するにいたる。
2016年、北米で日本車販売に翳りが出るなか、日本勢でフォレスターやアウトバックが好調な富士重だけが前年実績超える。また、北米マツダは2016年12月、米国の自動車専門誌「Car and Driver」の「2017年10ベストトラック&SUV」に新型CX-9が選出されたと発表した。
クロスオーバー車にいま、4WDは必須ではない。事実、欧州ではルノー・チャプターが大ヒットして、欧州ナンバーワンのクロスオーバー車となった。これらを追いかけるトヨタもC-HRを投入。このクルマがトヨタの小型車戦略の行方を指し示すのか。2017年2月からマツダは新型CX-5をグローバルに展開する。マツダの世界販売25%を占める新型CX-5が、マツダの命運を握る。
しかし、現在の米国市場では、ガソリン価格の下落や好景気を追い風に大排気量SUVやピックアップトラックが人気だ。2017年、クロスオーバー市場を制することが、勝ちに繋がるのか。(編集担当:吉田恒)
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