【2016年振り返り】「定額制音楽聞き放題サービス」の定着すすむ

2016年12月31日 17:36

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記事提供元:エコノミックニュース

日本レコード協会発表の生産実績によれば、16年1月~11月の音楽ソフトの売上高累計は、オーディオレコードで1607億3600万円となり前年同月比96%、音楽ビデオで568億8800万円となり同96%となっている。

日本レコード協会発表の生産実績によれば、16年1月~11月の音楽ソフトの売上高累計は、オーディオレコードで1607億3600万円となり前年同月比96%、音楽ビデオで568億8800万円となり同96%となっている。[写真拡大]

 世界の音楽市場に目をやると、CD販売による収益モデルは数年前からメインストリームの遥か彼方に追いやられている。特にアメリカなどではCDショップは街から消え、音楽消費の中心となったポストミレニアル世代特有の「モノの所有に対するこだわりのなさ」などに合わせた市場のシフトが完了したようにみえる。日本においては少々事情が違っており、CDを中心とする音楽ソフト市場は縮小傾向にあるものの、いまだ音楽市場での売上の中心は音楽ソフトだ。日本レコード協会による「日本のレコード産業2016」によれば、15年時点での音楽市場のうちわけでは、音楽ソフトの売上が8割以上を占めており、今年もこの構成比率は大きく崩れていない。ただし、近年、伸び続けるサブスクリプションは「定額制音楽聴き放題サービス」が牽引して大きく伸ばし、その一方で、順調に伸ばしていたライブ市場では微減となっている。これらの要因と数字の詳細をみていきたい。

 日本レコード協会発表の生産実績によれば、16年1月~11月の音楽ソフトの売上高累計は、1607億3600万円となり前年同月比96%、音楽ビデオで568億8800万円となり同96%となっている。音楽ソフトは減少傾向にあることは確かだが微減にとどまっているといえる。アメリカでは、14年時点でのパッケージ(CDやカセットテープ)売上比率が26%となっていることを考えると、音楽ソフトの売上が8割以上というのは驚異的で、これは音楽売上トップ20カ国のなかでも最も高い割合だ。なぜ日本のみがこれほどCDが売れるのか。その理由のひとつにCD購入に対する捉え方の特殊性がある。日本ではAKB48などのアイドル文化があり、それ以外にも熱狂的なファンを持つグループがタコツボ化した状態で存在する。好きなグループやアーティストが発表するCDは、音楽を聴くためというより応援するために購入する。SMAPの解散報道から起こったCDの購買行動運動も象徴的だ。ちなみに、16年上半期でのシングル売上トップ3では、1位と2位にAKB48、3位に乃木坂46、4位・5位には嵐がランクインしている。

 次に、16年1月~9月での有料音楽配信の売上高をみると、ダウンロード販売が微減しているのに対し、サブスクリプションの伸びが目立つ。なかでもPC配信・スマートフォンが特に伸びており、売上高145億1200万円で前年同期比175%にもなる。これが牽引してサブスクリプションの小計は145億1500万で同175%、有料音楽配信の総合計は383億5400万円で同113%となっている。要因としてはあるのは定額制音楽聴き放題サービスの台頭だろう。AWA、Apple Music、Google Play Musicといった以前からあったサービスの定着に加え、大本命のSpotifyが9月に上陸、無料プランを開始するなどでユーザー数を拡大した。世界最大の音楽配信サービスSpotifyの日本でのサービス開始がこれまでできなかったのは、音楽業界の抵抗が原因だ。広告を出して無料で音楽を聴いてもらうユーザー枠を設けるサービス形態に対して、一部のレコード会社が強く反発。Spotify側の交渉が難航した。今後は、上記売上高が示すように、定額制音楽聴き放題サービスが伸びていくと考えられる。

 次に、コンサートプロモート協会による16年上半期の調査から、ライブの総売上高をみると、1121億541万円となっており、前年同期比87.9%に縮小していることがわかる。近年のライブ市場は右肩上がりで、音楽市場では「CDが売れない時代の救世主」として扱われてきたが、今年の上半期に関しては伸び悩んだ。要因は大阪城ホール(1月7日~3月6日)、横浜アリーナ(1月12日~6月30日)、さいたまスーパーアリーナ(2月15日~5月11日)で改修に伴う閉鎖が重なったことだという。3会場で116公演、動員数131万2400人、市場規模100億3430万円が減少したとのこと。大都市のアリーナ閉鎖などハコの減少もアーティストや音楽業界にとって死活問題となっており、20年東京五輪に向けた都市計画推進もライブ市場に大きく影響すると考えられる。

 市場の激動に対してレコード会社も適応に必死だ。ワーナーミュージック・ジャパンは、15年よりCD販売からアーティストのマネジメント業務に軸足を移し、ライブやグッズ販売を収入基盤にする方針。エーベックスではライブ、アニメ、デジタル映像配信などのコンテンツやプラットフォームの構築に力を入れている。じりじりと進む音楽市場の再編を止めることは難しく、今後もその動きは加速すると考えられる。(編集担当:久保田雄城)

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