Apple、リモート脱獄を可能にする3件のゼロデイ脆弱性をiOS 9.3.5で修正

2016年8月29日 09:25

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記事提供元:スラド

Appleは25日、iOS 9.3.5をリリースした。このバージョンで修正された3件のゼロデイ脆弱性は、連携させることでリモート脱獄が可能となるものだ(Appleサポートの記事Lookout Blogの記事The Citizen Labの記事Ars Technicaの記事)。

脆弱性はカーネル関連2件とWebKit関連1件で、それぞれアプリケーションによるカーネルメモリー漏洩(CVE-2016-4655)、アプリケーションによるカーネル特権での任意コード実行(CVE-2016-4656)、Webサイトを訪問することによる任意コード実行(CVE-2016-4657)となっている。これらの脆弱性はイスラエルのNSOグループによる「Pegasus」スパイウェアで使われており、脆弱性を確認したCitizen LabとSophosでは3件の脆弱性をまとめて「Trident」と呼んでいる。

NSOグループは「合法的な傍受」を可能にするスパイウェア製品を政府機関専門に販売するサイバー戦争企業だという。Pegasusはターゲットを攻撃用のWebサイトに誘導してiOSデバイスにスパイウェアをインストールすることで、メッセージや通話、電子メール、アプリのデータなどへのアクセスを可能にする。

(続く...)脆弱性が発覚したのは、UAEの人権活動家で2015年にマーティン・エナルズ賞を受賞したAhmed Mansoor氏に対し、Pegasusによる攻撃が試みられたのが発端だ。UAEの拘置所で行われている拷問の証拠を見せるというリンクの張られた不審なテキストメッセージを受信したMansoor氏は、そのままメッセージをCitizen Labの研究者に送信。Citizen LabとLookoutの共同調査により、リンク先がNSOグループにつながる組織に属するものだと判明したとのこと。

iOSのリモート脱獄については、Zerodiumが昨年報奨金プログラムを実施し、1チームが賞金100万ドルを獲得している。ただし、リモート脱獄の脆弱性が実際の攻撃で使われていることが確認されたのはTridentが初めてのようだ。

Appleは招待者のみを対象にしたバグ発見の報奨金プログラムを秋から実施することを発表しているが、Appleの賞金20万ドルに対し、ブラックハット企業のExodusは賞金50万ドルを提示している。そのため、豊富な資金を持つAppleが脆弱性の発見に力を入れず、ヘルストラッカープラットフォームの買収Apple Musicでのアルバム限定配信にばかり金を使っているとの批判もみられる。 スラドのコメントを読む | アップルセクション | セキュリティ | バグ | iOS | プライバシ

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