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クルマ自動運転を見据え、業界の垣根を越える連携が進む欧米。日本は乗り遅れていないのか?
トヨタが米国シリコンバレーに設立した、人工知能技術の研究開発を行う新会社Toyota Research Institute, Inc.(TRI)は、体制および進捗状況を米国ラスベガスで開催された「2016 International CES」で公表した。登壇したのは、TRIの最高経営責任者(CEO)であるギル・プラット(Gill A. Pratt)氏[写真拡大]
米ラスベガスで今年、年明け早々に、全米家電協会(CEA)が主宰する世界最大の家電見本市「CES(通称“セス”/Consumer Electronics Show)」が開かれた。一般的な家電の新製品やコンセプトモデルが発表される見本市で一般公開されない。にもかかわらず、今回のCESには自動車大手9社が出展。部品を含めるとクルマ関連が115社にも上った。自動運転などクルマと情報技術(IT)の接近が背景にある。
そこでのニュースはまず、「主催者の組織名を全米家電協会(CEA)から全米民生技術協会(CTA)に改めた」ことだった。主催団体「CEA」は、家電やIT、自動車などが融合する新しい消費財市場を包含するには「家電」では包括的な展示見本市は開催できないことを理由にあげた。
たしかに開催中に会場のプレスカンファレンスで、独アウディと米クアルコム、独フォルクスワーゲン(VW)と韓国LG電子が提携を発表。トヨタも自動運転などの開発に注力すべく米シリコンバレーに開設した人工知能(AI)研究所の概要を公開した。新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)」の社員は約200人の予定で、今後5年間に約10億ドルを投入。マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターとの連携も進める。TRIの研究開発分野として発表したのは、「事故を起こさないクルマ、誰もが移動の自由を享受できるモビリティー、高齢者の尊厳ある老後をサポートするロボットなど、人と協調できる人工知能技術の開発に取り組む」としたほか、人工知能を新材料探索、生産管理システムなど幅広い領域に応用する考えという。見本市のニュースは、完全に家電とは異なる世界に突入したといえる。
ディーゼル問題で揺れるVWは、ディーゼル主導の開発から電気自動車(EV)に大きくステアリングを切り始め、新しいEVの試作車を世界初公開した。そこでキーワードとなったのが、「クルマは究極のモバイル端末だ」とする発言で、クルマのIT化を推し進めると発表した。
もうひとつドイツで注目なのは、アウディ、BMW、ダイムラーの3社が昨年末、フィンランドのノキアの地図子会社「HERE(ヒア)」を28億ユーロ(約3600億円)で共同買収した一件だ。地図情報をクラウドで共有し、自動運転のための共通基盤作りを目指すというわけだ。ドイツの業界横断的な産業革新策「インダストリー4.0」を見据えた連携ともとれる動きだ。
一方、日本のメーカーはどうか。戦後の高度成長時代から切磋琢磨して競争してきた各社は系列と自前主義が根強い。つい最近まで、電気自動車の充電方式でも、なかなか足並みがそろわなかった。ハイブリッド車(HV)やEVの効率アップに必須とされた新世代半導体「Sicパワー半導体」開発でも、トヨタは系列のデンソーに自社開発させ、半導体メーカーとは組まなかった。
そのトヨタが研究所を米国シリコンバレーに設けたことは、その意味で海外の技術者との連携を促す大きな一歩だといえる。最先端ITシステム開発時代に即したオープンな連携ができるかどうか、トヨタの技術戦略が問われる。
クルマの自動運転を究極にまで完成させるには、交通インフラとの協調が必要になってくる可能性が高い。クルマの制御技術やカーナビソフトなどは確かに企業の重要戦略だが、各社の装置がバラバラなままでは、インフラとの協調は不可能と思えるし、ユーザーインターフェイスがメーカー毎に異なっていては使いにくいだろう。
欧米の車大手が自動運転に傾斜した背景にあるは、グーグルやアップルの台頭だ。それぞれが車載用のソフトを投入し、クルマ市場を狙いはじめている。(編集担当:吉田恒)
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