レアメタルを一切使用しないFeNi磁石を作製することに成功―東北大・牧野彰宏氏ら

2015年12月17日 21:52

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(a)L10-FeNi相の生成の模式図。(b)一般的に知られているFe-Ni二元系状態図(背景図)と隕石関係の論文でみられる状態図。後者では赤色太線で描かれている超平衡L10-FeNi規則相が含まれている(東北大学の発表資料より)

(a)L10-FeNi相の生成の模式図。(b)一般的に知られているFe-Ni二元系状態図(背景図)と隕石関係の論文でみられる状態図。後者では赤色太線で描かれている超平衡L10-FeNi規則相が含まれている(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の牧野彰宏教授らの研究チームは、従来必須とされていたSm(サマリウム)、 Nd(ネオジム)、 Dy(ジスプロシウム)などのレアメタル元素を全く含まないFeNi磁石を作製することに成功した。

 Fe-Ni磁石(L10-FeNi規則相)は、宇宙空間で形成された天然隕石中に極微量含まれることが1960年代から知られており、現在、産業界で幅広く使われているネオジム磁石並みの磁石特性を示すとの予測も報告されている。一方、天然のFe-Ni磁石の形成には数十億年かかるため、人工的に短時間で作製することは不可能と考えられていた。

 今回の研究では、研究チームが省エネモータやトランスなどの磁性部品への応用展開を図っていたFe-Si-B-P-Cu系ナノ結晶軟磁性合金「NANOMET(ナノメット)」にNiを添加することで、NANOMETと同じ製法でレアアース元素を全く含まないFeNi磁石を短時間で高品質に作製できることがわかった。アモルファス金属が熱処理によってナノ結晶化する時の超高速原子移動を利用することで、生成時間を劇的に短縮できたという。

 今回の磁石は、高価な元素を含まないため原料価格は廉価で、研究グループがこれまでにNANOMETで培った製造技術も活用可能という。

 研究グループは今後、真の新物質としての詳細な基礎的物性、磁気特性の把握を優先し、並行して、実用材料としての研究・開発を着実に進める予定としている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「An artificially produced rare-earth free cosmic magnet」。

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