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閉じ込められたプラズマの中で発生する揺らぎのメカニズムを解明―九大・伊藤早苗氏ら
図1:揺らぎの強度の時間変化(上)とその周波数の変化(下)。左が今回の実験で発見された揺らぎの信号、右が開発した理論モデルに基づくシミュレーションによる再現。図2:亜臨界不安定性のイメージ。揺らぎの成長に対する復元力を示している。振幅がしきい値よりも低いと振幅は0に近づいて安定である(黒)、中心から離れてしきい値を超えると、急激に成長する(赤)。(九州大学の発表資料より)[写真拡大]
九州大学・伊藤早苗教授らの研究グループは11日、閉じ込められたプラズマの中で発生する突発的な揺らぎの発生の機構を解明し、この突発的な発生の予言を可能にしたと発表した。予言が可能になると、核融合炉の安定した発電や炉内機器の寿命の延長に繋がるという。
現在、核融合炉の実現を目指して、1億度以上の高温プラズマを効率よく発生させるための研究が世界中で行われている。閉じ込められたプラズマの中では時々、突然大きな揺らぎが発生し、プラズマが逃げだしてしまう現象が発生することがあり、このような現象は核融合炉の性能を左右し、機器にダメージを与える危険があるので、その発生メカニズムを明らかにする必要があった。
今回の研究では、高エネルギーの重イオンを用いる計測器(重イオンビームプローブ)を用いてプラズマ内部の揺らぎの計測を行ったところ、通常は安定で発生しないと考えられる揺らぎが、突発的に大きな振幅を伴って発生するという新しい現象が発見された。
そこで、「亜臨界不安定性」という過程に着目し、この現象を説明するための新しい理論モデルを構築し、数値シミュレーションで確認を行ったところ、実験結果を再現することができた。さらに、突発的に大きな振幅を伴って発生する現象の実験データを詳しく調べると、この突発的な揺らぎの発生より前に別の揺らぎが発生しており、それがきっかけとなって突発的な大振幅の揺らぎが発生していることを示す実験結果が得られた。
今後は、核融合装置のダメージを回避するなど、核融合研究開発への寄与のほか、広く観察されている突発現象の理解を進める上での指針を与えることが期待される。
なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Nonlinear excitation of subcritical instabilities in a toroidal plasma」(和訳:トロイダルプラズマにおける亜臨界不安定性の非線形励起)、「Strong destabilization of stable modes with a half-frequency associated with chirping geodesic acoustic modes in the Large Helical Device」(和訳:大型ヘリカル装置における周波数掃引測地線音響モード励起に伴う半周波数安定モードの強い励起現象)。
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