優秀なサッカー選手は、状況の見極めと反応の出力が速い―筑波大・浅井武氏ら

2015年12月2日 16:27

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各課題で熟練者と非熟練者のERPを比較した図。単純な選択反応課題CRT1では熟練者と非熟練者に差異はないが、複雑な判断を伴う選択反応課題CRT2では熟練者が非熟練者と比較して刺激評価を行う処理スピードが速いという結果が得られた。(筑波大学の発表資料より)

各課題で熟練者と非熟練者のERPを比較した図。単純な選択反応課題CRT1では熟練者と非熟練者に差異はないが、複雑な判断を伴う選択反応課題CRT2では熟練者が非熟練者と比較して刺激評価を行う処理スピードが速いという結果が得られた。(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学の浅井武教授・松竹貴大らの研究グループは、サッカーのトレーニングを積んでいる選手は状況を素早く見極める処理が速く、反応を出力するまでの処理も速いことを明らかにした。

 サッカー競技のように相手選手などの状況に応じて瞬時の判断が求められる種目では、情報処理能力が重要であるが、持久力や瞬発力のような定量的な評価方法が確立されていない。

 今回の研究では、全日本大学選手権で優勝経験のある大学サッカー部レギュラー選手8名とサッカー競技経験のない大学院生8名を対象に、状況判断課題実施中の脳波を測定し、生理心理学の分野で用いられる事象関連電位(ERP:ある出来事を脳が処理する過程に関連して出現する電位)を指標にした分析を行った。

 その結果、より複雑な状況判断課題においては熟練者のほうが非熟練者よりもERP早期成分 (N200、P300)が有意に速いこと、つまりサッカー熟練者のほうが状況を素早く見極める処理が速く、さらに反応を出力するまでの処理も速いことを明らかにした。

 今後は、本研究成果が、サッカー選手の情報処理能力を評価する有効なツールとして活用されることが期待されている。

 なお、この内容は日本スポーツ心理学会が発行する学術雑誌「スポーツ心理学研究」に掲載された。論文タイトルは、「サッカー選手の判断に伴う中枢情報処理能力の評価―反応時間と事象関連電位を指標として―」。

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