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加速する家庭用燃料電池システム「エネファーム」、経産省は2020年に140万台を掲げる
東京ガスが供給する貯湯ユニット・熱源機別置NA-0715ARS-KB型「エネファーム」、価格は160万円(税別)。普及型の価格目標は70万円だ[写真拡大]
2005年に鳴り物入りで政府首相官邸に日本初導入した燃料電池発電コージェネレーションシステム。2009年に一般に発売された家庭用燃料電池システム「エネファーム」はそのコージェネの愛称だ。しかしながら当初、住宅建設業界でも高度な家庭用ガス給湯器だとして、理解がなかなか進まなかった。加えて価格の高さやなどが災いし、年間1万台程度の需要しかなかった。が、ここにきて価格も当初の半値ほどになり市場は拡大傾向にあり、今期は5万台を突破する勢いだ。発売以来6年を経て、エネファーム普及が加速しはじめたわけだ。経済産業省の工程表では、「2020年に140万台」、「2030年に530万台」の普及が目標だ。
家庭用燃料電池「エネファーム」は、水素と空気中の酸素との化学反応で発電する装置だ。「エネファーム」発電の原理は、トヨタの燃料電池車「MIRAI」と同じで、水の電気分解の逆と考えればいい。都市ガスやLPガスなどの水素源から取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくる。さらに、発電の際に発生する熱を捨てずにお湯をつくり給湯に利用。エネルギーをフルに活用するシステムだ。
ただ、このシステムは発売開始当時、一戸あたりの設置費用が300万円超で、初年度設置は2500台ほどにとどまった。が、その後の技術開発・量産化などで150万円ほどまで価格がさがり、コージェネ財団によると、2014年には3万8018台ほどの需要となっていて、2014年までの累計普及台数は、11万5455台となった。ただ、2015年は、昨年の設置台数を確実に上回る予想となっており、普及に弾みがつきそうな状況だ。東京ガスでは、4人世帯でエネファームを導入すると、光熱費を年間5~6万円程度削減できるとしている。従来型のガス給湯器が20万円程度なので、普及価格として2017年を目途に、普及価格「本体70万円」という目標を掲げている。
また、経済産業省は6月に、今後の水素エネルギー利用のあり方を示すため、家庭用燃料電池を東京オリンピックが開催される2020年に140万台、2030年に530万台普及させる目標を示した工程表を発表した。
この工程表では2020年頃に自家発電用水素発電を導入し、2030年頃には発電事業用にもこの発電方式を広げることや、燃料電池車の普及を世界最速で目指すとの目標も掲げられた。同省は国内の水素関連市場の規模が2050年に約8兆円に達するとしている。
水素は、石油や天然ガス等の化石燃料、バイオマスで発生したメタノールやメタンガスからの改質からえられるほか、風力発電や太陽光発電などの電力による水の電気分解からの製造が可能だ。エネルギーセキュリティの観点から有用だ。
エネファームの利点は以下のとおり。一次エネルギー23%削減、CO2排出38%削減可能だ。電気をつくる場所と使うところが同じ、つまり通常の電力会社では5%ほど発生するとされる送電ロスが無い。もうひとつのメリットは、発電で発生する熱を利用して給湯、床暖に使うことができること。
現在、パナソニックと東芝がPEFC方式のエネファームを発売、アイシン精機がSOFC方式の機器をリリースしている。昨年4月にはパナソニックが集合住宅向けのユニットを開発し発売している。PEFC(固体高分子形)は排熱回収効率が高く、起動停止が比較的容易だ。また、SOFC(固体酸化物形)は電力負荷に合わせて24時間連続運転を行ない、PEFCに比べて発電効率が高く、本体も小型だ。
2009年以降、エネファームは頻繁にモデルチェンジがなされており、停電時にもバッテリーなしで運転できるよう自立発電機能が搭載された機器も開発され、継続的に発電することができる。なかでもSOFCは、エネファームで最も高い発電効率が得られる究極の発電装置で、高品位な排熱も回収できることから、家庭用だけでなく事業用としてもエネルギー供給システムとして期待されている。
「エネファーム」導入には補助金制度も活用出来る。経済産業省資源エネルギー庁が公募した平成26年度補正予算「民生用燃料電池導入支援補助金」に係る補助事業者に一般社団法人「燃料電池普及促進協会(FCA)」が採択された。同組織は、2008年(平成20年)12月に設立され、大手メーカーや日本を代表するエネルギー企業が多数加入、燃料種別を問わない燃料電池の普及促進に貢献する事業活動を展開している。(編集担当:吉田恒)
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