関連記事
2度の大賞に輝いたサカイ阿部氏「見たことのない景色を見たい」 2015年度毎日ファッション大賞
(左から)大丸隆平oomaru seisakusho 2 inc社長、阿部千登勢「サカイ」デザイナー、森川マサノリ「クリスチャン ダダ」デザイナー、第一織物の吉岡隆治社長
ファッション業界において優れた成果をあげた個人・団体に贈られる「2015年度(第33回)毎日ファッション大賞」の授賞式が5日都内で行われ、2度目の大賞受賞となった阿部千登勢「サカイ(sacai)」デザイナーや、新人賞の森川マサノリ「クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)」デザイナーをはじめ、各賞の受賞者が出席した。
阿部氏の大賞受賞は、2007年(第25回)に続き2度目。1回目の受賞後も活躍の場を広げ、2011秋冬からパリでショー形式のコレクションを発表。2015春夏からはナイキラボとのカプセルコレクションをスタート。圧倒的な存在感がファッション以外の分野にも影響を与えたと評価された。阿部氏は、ブランドを開始してからの17年間を振り返り、「嫌なことはやらず、好きなことだけを追求してきたにも関わらず、この場に立たせてもらったのは、皆様の支えがあったからこそ。サカイの名前を知っていただけるようになったのは、ジャーナリストや雑誌編集者の皆さんがサカイの服を着て国内外でコマーシャルをしてくれたから。商品を買ってくださった店舗の方、無理難題にも応えてくれている作り場の皆さん、そしてスタッフに感謝したい」」とコメント。加えて、「自分の見たことのない景色を見たいと日々思っている。きっと私の知らない世界がほかにもあって、ここまで見えてきたけど、もっと違うものがある。それを追求しながら、今後も精進していきたい」と語った。
新人賞・資生堂奨励賞を受賞した森川氏は、これまで国内外で支持されていたメンズコレクションに加えて、レディスコレクションを発表したことや、初進出したパリコレクションでも高い評価を受けたことなどが受賞の理由となった。森川氏は、「ファッション業界から離れたこともあったが、刺繍屋を営んでいた祖父が他界し、もう一度自分のやりたいことを見つめ直した時、ファッションデザイナーになろうと決めた。“世界で戦えるブランド”という言葉を胸に、5年間このブランドをやってきた。まだ遠いかもしれない。でもいずれは、という思いで、模索しながらも挑戦していきたい」と話した。
1990年に今回で25回目を迎えた鯨岡阿美子賞は、米国NYに拠点を置き、欧米有力メゾンのパターンメーキングを数多く手がけるoomaru seisakusho 2 incの大丸隆平社長が受賞した。国内外に向けて日本の技術を示していることや、組織化しながらパターンメーキングの仕事を若い世代に伝えていることが、業界の発展に寄与したとして評価された。大丸氏は、スタッフがこの日のために仕立ててくれたというスーツで登場。「ものづくりは、つくり手がいなくなっても、意思とその意欲が永遠に残っていくもの。また、誰にでも平等に与えられた特権だと思っている。20年以上に渡り服作りを続けてきたが、自分がやってきたことのバックグラウンドには、メイド・イン・ジャパンがあることを痛感した。メイド・イン・ジャパンを次の世代へグローバルに伝えていくために会社組織を作った。明日からまた仕事場に戻り淡々と仕事を続けていくことが、そのなかで、ものづくりの意思が永遠とつながり、新しいメイド・イン・ジャパンの形になれば本望だ」とコメントした。
話題賞を受賞したのは、仏ラグジュアリーブランドの「ディオール(Dior)」。東京・表参道の旗艦店リニューアルや、ブランドの軌跡を辿る展覧会の開催、世界初披露となる「エスプリ ディオール」のランウェイショーを東京で行ったことなどが社会的にもインパクトを与えたとして話題になった。岩瀬雅樹クリスチャンディオール社長は、「日本で、ここまでブランドをフォーカスして見せてきたことはなかった。普遍的な価値と、変わり続けるファッションというものの両面性が理解いただけた」とコメント。10月にウィメンズのアーティスティックディレクターのラフ・シモンズ退任が発表されたことにも触れ、「次は誰?という憶測が飛んでいるが、このメゾンにふさわしい価値や革新性を兼ね備えたクリエイティビティーが、新しいチャプターを刻んでくれるだろう」と締めくくった。
特別賞は、合繊織物の一大産地でもある北陸・福井で超高密度合繊織物の開発・製造・販売を行う第一織物が受賞した。世界のハイブランドに高品質生地を提供しているだけでなく、テキスタイルの新しい流通システムを開拓していることなどが評価された。ヨットやパラグライダーの産業資材織物を製造していた同社が衣料用織物の開発に着手したのが、約20年前。吉岡隆治社長「後発でこの業界に入るのであれば、この世に存在しない、オリジナルのものを作ろうと心に誓ってやってきたが、衣料の分野ではど素人。何をやっても空回りだった。そんな時に支えてくれたのが、多くのテキスタイルデザイナーやファッションデザイナー。そして、合成繊維の産地である北陸・福井で糸づくりや織り、染めの匠たちを擁する多くの企業だった」とコメント。「彼らがいなければ、私たちの意思は貫いてこれなかった」として感謝の気持ちを述べるとともに、「今まで以上にメイド・イン・ジャパンにこだわり、北陸の匠とともに、北陸のテキスタイル、日本のテキスタイルを絶やさぬよう努力したい」と力強く語った。
▼受賞結果は以下のとおり。
「2015年度(第33回)毎日ファッション大賞」
大賞:
阿部千登勢 「サカイ(sacai)」デザイナー
新人賞・資生堂奨励賞:
森川マサノリ 「クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)」デザイナー
鯨岡阿美子賞:
大丸隆平 oomaru seisakusho 2 inc社長
話題賞:
「ディオール(Dior)」
特別賞:
第一織物
受賞式後には、「クリスチャン ダダ」の来春夏ウィメンズコレクションが披露された。
(取材:アパレルウェブ編集部/撮影:増田義和)
※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。
スポンサードリンク