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光で電気の流れを制御する仕組みを開発―東工大・深谷亮氏ら
(a)光を使った電気特性制御のスキーム、(b)光で生成した絶縁体状態、(c)金属状態におけるホールペアの流れ。(東京工業大学の発表資料より)[写真拡大]
東京工業大学の深谷亮産学官連携研究員らの研究グループは、銅酸化物超伝導体中の電気の流れをレーザー光でオフ・オンする方法を発見した。
電気的には実現不可能な応答速度で物質の特性を高速に切り替えられれば、次世代の高速光スイッチングデバイスへの応用展開ができる。そのため、光を利用して物質中の電子の動きを自在に制御する技術や、物質の光学的・磁気的・電気的性質などを光で変化させる光機能性材料の開発が世界中で精力的に行われている。
今回の研究では、金属状態の梯子型銅酸化物結晶(ストロンチウム・カルシウム・銅酸化物)の電気伝導性を0.1ピコ秒の時間幅を持つパルスレーザー光照射で瞬時に抑制することに成功した。そして、これまで光照射では実現困難とされてきた、金属から絶縁体へ変化する新奇な現象を発見した。
さらに、同研究グループによる先行研究及び今回観測された光による絶縁体―金属間の変化を利用して、光パルス列を用いた単一試料による絶縁体―金属の双方向光スイッチングを試みた。その結果、光で生成した金属状態に光を照射してもそのホールペアの伝導性が抑制されることが明らかとなり、光パルス列を用いて、0.1ピコ秒での単一方向スイッチングに加えて、1ピコ秒以内で絶縁体―金属の双方向光スイッチングにも成功した。
今後は、さらに研究を進めていくことで、室温を含む広範囲の温度域で高速に動作する次世代光スイッチングデバイスへの応用展開に向けて大きく前進すると期待されている。
なお、この内容は「Nature Communications」に掲載された。論文タイトルは、「Ultrafast electronic state conversion at room temperature utilizing hidden state in cuprate ladder system」。
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