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最高裁・砂川判決に米国の意向 国が検証すべき
安保法案はアメリカに頼まれて作ったのではないか、その疑惑を7月25日の政治コラムに取り上げたが、米軍駐留を違憲とした東京地裁の「伊達判決」を破棄した最高裁判決(砂川判決)に「米国の意向が働いた」問題が19日の参院安保特別委員会で取り上げられた。[写真拡大]
米軍駐留を違憲とした東京地裁の「伊達判決」を破棄した最高裁判決(砂川判決)に「米国の意向が働いた」との指摘が19日の参院安保特別委員会で取り上げられた。
取り上げたのは生活の党の山本太郎共同代表。山本共同代表は、この日の委員会で「アメリカの政治工作通り、最高裁はシナリオ通りの判決を出した」とし、検察が高裁を飛ばし、最高裁に「跳躍上告」したのも「アメリカのリクエストだった」と指摘。
山本共同代表が指摘した米国からの圧力があったことは、2008年4月29日の電子版で、共同通信も「マッカーサー駐日米大使(当時)が、伊達判決の破棄を狙って藤山愛一郎外相に最高裁への『跳躍上告』を促す外交圧力をかけたり、最高裁長官と密談するなど露骨な介入を行っていたことが29日、機密指定を解除された米公文書から分かった」と報じており、「日米関係史を長年研究する専門家の新原昭治氏が今月、米国立公文書館で発見した」と圧力が事実として存在した旨を報じた。
これが事実なら、砂川判決は憲法でなく、日米の政治交渉で導き出されたことになる。経緯について山本代表は「1959年3月30日、東京地裁で駐留米軍が憲法違反との判決が出た翌朝8時に、アメリカのマッカーサー駐日大使が当時の藤山愛一郎外務大臣に面会し、日本政府が迅速な行動を取り、東京地裁判決を正すことの重要性を強調。日本政府が直接最高裁に上告することが非常に重要と言った(という)。藤山外務大臣は9時に開催される閣議でこの行動を承認するように勧めたいと語ったそうです。そして4月3日、検察官が跳躍上告をした」。
「4月24日、当時の田中耕太郎最高裁判所長官がマッカーサー大使に、日本の手続では、審理が始まった後、判決に到達するまでに少なくとも数か月掛かるとわざわざ語ったという」。
岸田文雄外務大臣はこの指摘に「砂川事件に関し審理過程で、日米間で交渉したのではないか、こういった指摘がある」と山本代表以外からも指摘のあることを認めたうえで、「これについては、日米間で交渉したという事実はないと『考える』。砂川事件の際の最高裁判所への跳躍上告が米国の要望によるものであるというような御指摘は当たらないと『考えている』」と自身の考えは述べたが、事実ではないと『否定できなかった』。山本代表の指摘が米国立公文書館の資料に基づくものであったからだ。極秘情報は沖縄返還に伴う密約同様に米国側から入手するほかないようだ。
山本代表は『アメリカの国立公文書館から出ている資料に基づくものである』と指摘したうえで「田中耕太郎最高裁長官はアメリカ大使館の首席公使レンハートさんという人に、砂川事件の判決が恐らく12月に出るであろうと今は考えている、争点を事実問題ではなく法的問題に限定する決心を固めている。口頭弁論は9月初旬に始まる週の1週につき2回、いずれも午前と午後に開廷すれば、およそ3週間で終えることができると信じている。最高裁の合議が判決の実質的な全員一致を生み出し、世論をかき乱しかねない少数意見を避ける仕方で進められるよう願っていると語った、というのです。かなり精度の高い情報を最高裁長官自らがぺらぺらとアメリカ側に横流しした。自分の立場を最大限に生かして、手心を加えまくって根回しをして、日米安保を成立させるために都合のいい判決を出すのを急いだという話ですよね」とした。
そして「田中長官のお言葉どおり、1959年、昭和34年12月16日、最高裁大法廷で裁判官15名の全員一致で田中長官本人の口から米軍の駐留は合憲という砂川判決が言い渡された。これで、米軍の駐留は違憲とされた東京地裁判決(いわゆる伊達判決)は破棄されました』と提起した。
最高裁の判決は「憲法9条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。一方、条約は一見して、きわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」と、今にして思えば、アメリカの期待通りのものになってはいる。
司法判断が憲法によらず、高度な政治交渉で出されたとすれば、司法の独立性は大きく揺らぐことになる。歴史的にも検証すべき重大問題だ。なぜ、こうした問題を政府や国会が検証せず、今日まで放置しているのか、それ自体問題だ。
きちんと検証し、結果が報告されなければ政府の外交・防衛に対する独立国としての国民の信用はない。山本代表は19日の質疑で、こう言い放った。「いつ、(米国の)植民地をやめるんだ」。
山本代表の午前の質問中には議場から「(日本は米国の)もうひとつの州なんじゃないか」と野次が飛んだ。日米安保条約の双務性など日本の立ち位置を含め、事態は深刻で、根が深い。戦後70年に点検すべき課題も多い。(編集担当:森高龍二)
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