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欧州で始まったダウンサイズ直噴ガソリンターボ。その過給システムの過去と基本、そしてトレンド
トヨタが開発してレクサスなどに搭載する2リッター直噴ターボエンジン「8AR-FTS型」。最高出力175kW(235ps)/4000-5800rpm、最大トルク350Nm(35.7kg.m)/1650-4000rpm。とにかく幅広い回転域で太いトルクを発生する。今秋、クラウンにも搭載する予定だ[写真拡大]
ダウンサイジング直噴ガソリンターボエンジンが欧州から世界へ波及して、自動車業界でひとつの世界的なトレンドとなっている。過給機の一種であるターボチャージャーは、「たくさんの空気をエンジンのシリンダーへ供給するシステム」で、排気ガスのエネルギーを利用してタービンを回して、その力で大量の空気をエンジンのシリンダーに送り込むシステムだ。
具体的にどのようにしてたくさんの空気をエンジンのシリンダーへ送っているのかというと、シリンダーで燃焼したガスはエンジンの排気行程でピストンの上昇により排気ガスとして排気管へ押し出される。この排気ガスの流路にタービンを設置し、排気ガスの流れによってタービンを回す。
この際に、排気タービンの回転軸のもう片方の端に別のタービンをつけエンジンの吸気システムに置くことで、エンジンのシリンダーへ空気を大量に送り込む。これを過給と言い、過給する側のタービン装置をコンプレッサーと呼ぶ。これが基本的なターボのシステムである。
また、ターボはガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンと相性がいいと言われている。実際、昨今のディーゼル車は、すべてターボチャージャーを装着する。ディーゼルエンジンは空気のみを圧縮して空気の温度が高くなったところに燃料を噴射して自己着火させる。
一般的に理論空燃比(ストイキ)よりも空気が多い稀薄燃焼が特徴だ。つまり噴射する燃料量によって出力を調整する。一方、ガソリンエンジンは空気と燃料を混ぜた混合気を圧縮し、吸う空気量で出力を調整する。一般にストイキ燃焼が多くターボの役割が異なる。
国産乗用車で初めてガソリンエンジンにターボを装着したのは、1979年に登場した日産セドリック&グロリアだ。オイルショックを契機にして省エネ指向が高まり、“ターボは環境に優しい”としてアピールした。当時、日産は2.8リッター直列6気筒のL型エンジンを最上級車種で展開していたが、2リッター6気筒にターボを採用して2.8リッターエンジンを上回るパワー&トルク(145ps/21.0kg.m)を獲得した。
その後、日産は歌手の沢田研二をCMキャラクターに起用した910型ブルーバードに1.8リッター4気筒ターボエンジンを搭載して大ヒットさせ、トヨタやホンダ、三菱など各社がターボエンジン搭載に追随する。
1980年代にはコンパクトカーの日産マーチやホンダ・シティ、トヨタ・スターレットなどにもターボエンジン搭載車が登場して一種のブームと呼べる状況となった。が、そのころはまだ直噴エンジンも可変バルブタイミングもなく、低回転域ではレスポンスの悪い、いわゆるターボラグなどのターボ車のネガティブな要素が解決できていなかった。そして、90年代になると国産ターボは、一部高額なスポーツ車種を除いて死滅する。
しかし、2000年代半ばになって状況が変わる。2006年、独フォルクスワーゲン(VW)が直噴システムと過給器を組み合わせたダウンサイジング・コンセプトを発表。VWゴルフに1.4リッター4気筒エンジンにターボとスーパーチャージャーを組み合わせたツインチャージャー「TSI」エンジンを搭載した。
ディーゼルエンジンで培った直噴技術、綿密にコントロールする可変バルブや燃焼技術、インタークーラーによる温度管理でダウンサイズターボ開発を達成。それまでの2リッターエンジンを凌ぐ性能を獲得した。
日本勢はハイブリッドシステムで省燃費&環境性能を追求し、この直噴ターボエンジン開発で出遅れていた。が、ここにきて動きが活発化している。トヨタは2リッターと1.2リッターのターボエンジンを開発し、3.5リッターエンジンの代わりに2リッター版をレクサスのSUVに、1.2リッターターボを1.8リッターエンジン車よりも高価な価格設定としてオーリスに搭載した。ホンダも新しいステップワゴンに1.5リッターターボを搭載。従来主流だった2リッター車は廃版とした。
これまでターボに消極的だったマツダも次世代スカイアクティブ戦略の一環として2.5リッターターボを開発しているという。また、ディーゼルエンジンで培った稀薄燃焼技術をガソリンエンジンに応用するガソリンの「リーンバーン過給」に注目している。こうして国産ガソリンターボは80年代のネガティブな要素を排除し“省エネ”の看板を掲げて復活を遂げているのだ。
もしかすると近い将来、ディーゼルエンジンのようにガソリンエンジンもすべてターボ化されるかも知れない。(編集担当:吉田恒)
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