東大、ガラス転移のメカニズムに関する新たな発見

2015年5月22日 16:56

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密度0.97における粒子の構造秩序と運動性の相関を示す図(東京大学の発表資料より)

密度0.97における粒子の構造秩序と運動性の相関を示す図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の田中肇教授・John Russo特任助教の研究グループは、多分散剛体円盤液体において、ガラス転移点に近づくにつれ過冷却液体の中に潜む秩序構造のゆらぎが発達し、それがダイナミクスの空間的なゆらぎを支配していることを発見した。

 融点以下の過冷却液体において温度の低下とともに液体のダイナミクスが急激に低下し、最終的に連続的に固体化するガラス転移現象のメカニズムは、未だに解明されていない。

 今回の研究では、粒子ピン留め法は液体粒子の2体相関(並進秩序の相関長)を取り出しているだけで、ガラス転移に重要な多体的な構造相関を見ることができないことを明らかにした。また、粒子のピン留めの効果は、その粒子の周りの粒子の存在確率に2体相関の長さで減衰する振動を与え、その影響が近傍にあるピン留め粒子の作り出す振動と干渉しあった時に、粒子位置に対して幾何学的な拘束が生じるという機構で理解できることや、方向相関の高い領域のダイナミクスは遅く、低い領域のダイナミクスは早いことも発見した。

 今後は、本研究成果が、これまでの液体に関する乱雑かつ均一という描像を大きく変える新たな視点を提供すると期待されている。

 なお、この内容は「PNAS」に掲載された。論文タイトルは、「Assessing the role of static lengthscales behind glassy dynamics in polydisperse hard disks」。

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