【小倉正男の経済羅針盤】「ギリシャ・デフォルト」の不確実性

2015年5月6日 13:03

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■ギリシャと債権団――捗らない交渉

 ギリシャと国際債権団の交渉はなんとも捗っていない。ギリシャは債権団が納得する改革案の提出を果たせていない。

 債権団としては、年金削減、レイオフなど労働改革を求めている。だが、ギリシャはそれを頑として拒否している。債権団は、それではギリシャへの金融支援を行えない。

 ギリシャが、デフォルト(債務不履行)の一歩手前にあるのは周知のことだ。デフォルトを最後の「人質」にしての交渉だが、交渉がまとまらなければ最悪の事態となる。

 ギリシャにとって、「優遇された年金」、「過剰なうえにしかも高給な公務員」といった国家体質は、受益層には既得権益そのものといって間違いない。これはギリシャとしては「国体護持」みたいなことかもしれない。

 「国体護持」か、デフォルトか――。デフォルトになれば、「国体護持」もクソもないのだが・・・。ともあれ、ギリシャの危険な岐路が刻々と迫っている。

■デフォルトになってもユーロ圏離脱はない・・・

 「ユーロ圏はチェックアウトのないホテル」、仮にデフォルトになっても、ギリシャがユーロ圏から離脱することはない。あるいは、離脱させない。いかなることになってもギリシャが通貨をドラクマに戻すことはありえない――。

 以前にいわれていたギリシャの「ユーロ圏離脱」は、後退というか、いまや消滅している。しかし、ギリシャがユーロ圏から離脱しないことが特効薬、あるいは解決策になるのだろうか。

 1個の腐った卵を取り除くのではない。1個の腐った卵はあっても、卵というものは腐ったり破れたりするものだから――、取り除かないでほかの卵全体で平準化して守る。

 究極の「護送船団方式」のようなものか――。ユーロ圏はどうやらそうした動きをたどっている。だが、不確実性はどうしても残る。大きなネックは解決策としてこれだという確信が持てないことだ。

■ユーロ圏は「大いなる実験」ではすまない経済規模

 仮にギリシャがユーロ圏を離脱してドラクマに通貨を戻せば、「通貨・ドラクマ」は売られて紙くずのようになる。ギリシャは、それでなくても厳しいのにさらにユーロ建て債務を返済できなくなる事態になる。悲惨な結果――、デフォルトを招くのは自明だ。

 ギリシャがユーロ圏から離脱しないでデフォルトになればどうだろうか。未体験ゾーンの事態であり、ここはあえて最悪の想定をしておく必要がある。 当然ながらユーロが売り込まれる。ドイツやフランスはユーロを全力で支えるに違いない。ユーロは紙くずのようにはならないだろう。それでも未体験の事であり、あくまで衝撃は小さくないと想定しなければならない。

 ギリシャ国債を抱えているギリシャやユーロ圏諸国の銀行など金融機関が、不良債権を掴むことになる。この衝撃はどうなると明確にいえないにしても、影響を楽観視するのは間違いではないか。

 心配性かもしれないが、ここまでいたればこうしろどうしろといってもせんない話である。ユーロ圏=EU(欧州連合)はもともと「大いなる実験」といえる面がある。ただそうであるにしても、ユーロ圏経済を単体としてみなせば世界トップの規模を持っている。ユーロ圏は、世界GDPのおおよそ30%を占めているのである。

 ユーロ圏経済はすでに「大いなる実験」ではすまないところにある。むざむざ世界経済を根底から揺るがすような事態を招かないことを望むのみである。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数) (情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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