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京都大学の林直顕研究員らによる研究グループが「負の熱膨張」を示すことを発見した酸化物材料「BiNi1-xFexO3」の低温(左)と、高温(右)の結晶構造を示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の林直顕研究員らによる研究グループは、室温付近で既存材料の2倍以上の大きさの「負の熱膨張」を示す酸化物材料「BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)」を発見した。
ほとんどの物質は温度が上昇すると、熱膨張によって長さや体積が増大するが、光通信や半導体製造などの精密な位置決めが要求される局面では熱膨張が問題になるため、温度上昇に伴って収縮する「負の熱膨張」を持つ物質によって、構造材の熱膨張を打ち消している。しかし、現在は負の熱膨張を持つ物質の種類は少なく、市販品では最高でも温度上昇1度当たり100万分の40の負の線熱膨張係数しかなかった。
今回の研究では、「ペロブスカイト」という構造を持つ酸化物BiNi1-xFexO3(ビスマス・ニッケル・鉄酸化物)が、室温近傍の温度域で温度上昇1度当たり100万分の187の負の線熱膨張係数を持つことを発見した。大型放射光施設SPring-8で放射光X線回折を行い、そのメカニズムを調べたところ、低温ではビスマスの半分が3価、残りの半分が5価という、特異な酸化状態を持っているが、温度が上昇するとニッケルの電子が一つ5価のビスマスに移り、ニッケルの価数が2価から3価に変化し、酸素をより強く引きつけるようになることが分かった。
研究メンバーは、「今回、新たに発見された負の熱膨張材料BiNi1-xFexO3は、精密光学部品や精密機械部品など、既存の負の熱膨張材料が担っていたさまざまな分野での利用が期待されます。それに加えて、絶縁体-金属転移を伴うことから、長さの変化を電気抵抗の巨大な変化に変換する、高精度のセンサー材料への応用へつながることも考えられます」とコメントしている。
なお、この内容は「Applied Physics Letter」オンライン版に掲載された。
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