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ギリシャ問題はスペイン等に波及しさえしなければ大きな問題ではない
*08:03JST ギリシャ問題はスペイン等に波及しさえしなければ大きな問題ではない
ギリシャ議会が解散・総選挙に突入し、緊縮財政に否定的な急進左派(SYRIZA)が支持を伸ばしていることから、ギリシャのデフォルト(国債の債務不履行)やユーロからの離脱が懸念されている。ギリシャ問題が欧州全体に影響を及ぼし、ひいては世界経済に大きな影響を及ぼすとの見立ても多い。
しかし、ギリシャ問題のスケールを見誤ってはならない。ギリシャのGDP(国内総生産)は約20兆円ほどで、同じく国債のデフォルトが問題となったアルゼンチン(約60兆円)の3分の1程度であり、さらに言えば日本の神奈川県のGDPよりも小さい。アルゼンチンのデフォルトが世界経済にどれほどの影響を及ぼしたかを想起する必要がある(しかもギリシャはいったんは債務の再編を行っており、奇しくもこの点でも再デフォルトが問題になったアルゼンチに似ている)。
ギリシャ問題がアルゼンチンと異なって大きな問題になりうるとすれば、ギリシャ問題がスペインやイタリアなどの他の南欧重債務国に連鎖的に波及する可能性があるという点である。逆に言うとその点のみ注目すればよく、それらの国に波及効果がなければギリシャ単体がデフォルトしようとユーロから離脱しようと世界経済への影響は限定的だ。ドイツがギリシャのユーロ離脱に対して準備を始めたという報道も一部あったが、ドイツもその点を見極めているとみられる。
22日に予定されている欧州中央銀行(ECB)理事会では、欧州各国の国債大規模買い入れを行う量的緩和が検討されているが、そこでスペインやイタリアの国債買い入れ枠が設定されれば波及効を防ぐ防波堤となろう。足元でも、ギリシャ国債の金利が急騰しているのに対して、スペインやイタリアの国債の金利が急騰していないのは同政策に対する期待があるためだ。実際に実行されれば、米国や日本で量的緩和が実行された場合と同様ギリシャ以外の各国の金利が低く抑えられるのは間違いない。
翻ってギリシャ単体の問題においても、仮に急進左派が政権を取ったとしても、緊縮財政を放棄したり、ユーロから離脱することが実際にできるとは思えない。緊縮財政を放棄すれば、トロイカからの支援が受けられなくなり、資金調達が困難となって公務員の再雇用等の政策は実施できなくなる。強制的にデフォルトしても同じだ。また、ユーロから離脱すれば財政破綻の他、通貨ドラクマの大暴落でギリシャ国民はハイパーインフレで塗炭の苦しみを味あうことになるだろう。どのような政権になろうと、せっかくプライマリーバランス(基礎的財政収支)が黒字化した現在の政策を継続するほうが得策であるという判断に引き寄せられる可能性は高い。《YU》
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