損失を乗り越えて海上発電技術の継続と発展に期待したい

2015年1月8日 18:36

印刷

記事提供元:フィスコ


*18:36JST 損失を乗り越えて海上発電技術の継続と発展に期待したい
三井海洋開発<6269>が昨年10月から実証実験のために佐賀県唐津市加部島沖1.2 kmの洋上に設置していた発電設備が深さ約50メートルの海底に沈んでいたことが6日、分かった。同社によると、水没したのは昨年12月18日未明で、原因は不明だが、現場海域周辺は前日、暴風雪警報が出ていた。設備は潤滑油等を使用しているが、周辺海域の汚染・人的被害がないことを確認しており、海が穏やかになる今春にも回収し、原因解明を急ぐという。
水没した発電設備は世界初の浮体式潮流・風力ハイブリッド発電システム[skwíd](スクイッド)の第 1 号機。全体の高さは69メートルで総重量は1000トン。海面より上の部分で風力発電、下の部分で潮の流れによって電気を起こす潮力発電を行う、風力と潮力を組み合わせた世界初の複合型発電設備。風車の起動を潮流の力が助けるように組み合わせたハイブリッドシステムにより、多様な気象条件に柔軟に対応できるだけでなく、従来の風力発電で必要だった起動時の外部電源も不要となり、離島向けの独立電源や災害時の非常用電源など幅広い分野での活躍が期待され、今年中の試運転を目指し準備の段階だった。
発電機を風車の下に配置した垂直軸型を採用し、設備の低重心化を図るとともに海中の水車がおもりとなって「起き上がりこぼし」になる設計にすることで、直立安定性を格段に向上させていた。さらに、波の揺れから機構部を切り離す独自の軸支持システムの開発や、全ての可動部を手の届くところに配置しメンテナンス性を飛躍的に向上させる、漁業との競業を大切にしたデザインにするなど、全てが「洋上」に特化した専用設計となっており、不安定な洋上で安定した発電パフォーマンスを実現するはずだった。
海洋エネルギーの本格的な取り組みはまだ始まったばかりで、技術のみならず発電コスト、設置場所など課題は多い。しかし、世界有数の海洋大国である日本にとって海洋エネルギーは、エネルギーの多様化や再生可能エネルギーの利用促進を図る上で重要なものと思われる。
この実験をめぐっては、2013年10月にも海上輸送中の潮流発電機が船から脱落するトラブルに見舞われている。今回の水没でも大きな損失が出たと思われるが、今後さらに技術を高め、実用化に向けた実験への取り組みを継続することが期待される。《YU》

関連記事