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原油の暴落は原油の時代が続くことの証左
*08:04JST 原油の暴落は原油の時代が続くことの証左
今年の半ば辺りまで1バレル100ドル前後で推移していた原油(WTI)が57ドル台まで大暴落している。直接の原因はOPEC(石油輸出国機構)で最大の産油国であるサウジアラビアが減産に反対していることだ。サウジアラビアが減産に応じないのは、シェアを維持する為とか、米国のシェールガス・オイル開発に打撃を与える為など、様々な憶測が飛び交っている。しかし、最も大きな要因は、米国のシェール革命により、世界的に原油の供給が需要を大きく上回っているという単純な事実である。米国はシェール革命により、サウジアラビアと並ぶ産油大国になり、さらにシェール開発がすすめばサウジアラビアを追い抜くとみられている。シェールガス・オイルの産出コストは米国の地域によって様々であるが50-90ドル程度に分布しているが、サウジアラビアは30ドル以下である。世界で供給が需要を大きく上回るなかで、原油のシェアを確保したいサウジアラビアが価格競争を仕掛けて米国のシェール開発に打撃を与えようとすることは故あってのことなのである。
今年半ばまで原油が100ドルを超えて推移していたのは、ウクライナや中東における地政学的リスクの高まりで実態を超えた値がついていたと言うことができる。
地政学的リスクが収まると、需要と供給で値段が決まって行くのは自然な流れといえよう。米国のシェール革命の衝撃は非常に大きく、世界の原油の供給は潤沢かつその状態がかなり長い期間続くことが確定的である。この構図はサウジアラビアによる価格戦略により、シェール開発の速度が多少鈍っても変わらないだろう。また、中東における紛争に関しても、紛争地域の原油輸出は増加傾向だ(テロ組織であっても原油を販売して資金を得ている)。
歴史的にみると、原油高により資源の乏しい先進国から産油国に移転していた富の流出がこれまでより大きく減少する流れとなる。
エネルギーのほぼ全てを輸入に頼る日本には大きな朗報である。折しも急激な円安でエネルギーコストが上昇しているところに願ってもないタイミングであった。また、原油の時代がまだ相当な期間続くことで、産業構造やエネルギー政策の転換に時間をかけて対応することが可能となった。
これ以上原油安がさらに大きく進むと金融市場に多少波乱が起きる可能性はあるが、日本経済のファンダメンタルズの好材料としてこれほど大きなことはない。なお、米国のシェール開発への投資の減少等に伴う問題については、原油を中東などの海外に依存しないという米国の基本戦略から、国家的な補助等によりシェール産業に大きな打撃になるようなことは回避されるだろう。《YU》
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