新型TMAXをスポーツバイクにまで昇華させたヤマハの戦略

2014年12月13日 20:31

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記事提供元:エコノミックニュース

写真は「TMAX530 ABS(TMAX IRON MAX)」の新色“ダークグレーメタリックS(ダークグレー)”。「TMAX530 ABS」の新色は、“ブルーイッシュホワイトカクテル1(ホワイト)”と、“マットダークグレーメタリック1(マットダークグレー)”の2色を用意。

写真は「TMAX530 ABS(TMAX IRON MAX)」の新色“ダークグレーメタリックS(ダークグレー)”。「TMAX530 ABS」の新色は、“ブルーイッシュホワイトカクテル1(ホワイト)”と、“マットダークグレーメタリック1(マットダークグレー)”の2色を用意。[写真拡大]

 現在販売されている国内のビックスクーターといえば、スズキ<7269>のスカイウェイブ650LX(650cc)や、本田技研工業<7267>のシルバーウイングGT(600cc)などがある。その中でも、走りに特化させ、異彩を放つのが、ヤマハ発動機<7272>のTMAX530(530cc)だ。その2015年モデルがさらなる進化を遂げたのだ。

 大きな変更点としては、まずスーパースポーツモデルと同様の倒立式フロントフォークを採用したところがあげられるだろう。また4灯LEDヘッドライトと、新形状のフロントカウルで精悍さも増している。スマートキーシステムや12VのDCアウトレットなど、使い勝手にもぬかりはない。

 さらに上級機種であるTMAX530 ABS IRON MAX(アイアン マックス)には、スエード調シート表皮や、ピンストライプ入り前後ホイール、クロノウォッチイメージの専用メーター、アルミ製フットプレートなどを採用し、ビジュアル面での個性もさりげなく主張している。

 実はこのTMAX530は、スクーターではないのだ。その証拠に、ヤマハでは“スポーツバイク”と、カテゴライズしている。スポーツバイク並の動力性能や操縦性能を持ちつつも、使い勝手も兼ね備えた、スクーターのようでスクーターではない、新しいジャンルといえるのだ。もちろんプラットフォームはスクーターなので、クラッチレスとなり、スロットルをひねれば、ギアチェンジ不要で、そのままトップスピードまで到達する。実際にTMAX530に乗ってみるとわかるのだが、バイクを操る楽しさが体感できるため、ワインディングを走りたくなる気分にさせてくれるのだ。

 話を戻すとして、今回、採用された倒立式のフロントサスペンションを簡単に説明すると、バイクのサスペンションの方式は、大きく分けて正立式と倒立式の2種類がある。正立式はスクーターや小排気量のバイクなどに採用され、しなやかな乗り心地や整備性、コスト面に優れる。それに対して、倒立式は、正立式のフロントフォークを上下逆さまにしたようなスタイルとなり、そのためバネ下重量の低減が可能で、良好な乗り心地や路面追従性に優れる。さらには剛性が上がったことにより、しっかりとしたハンドリング特性などの特徴を持つ。ヤマハが伝統的に守り続けているものの中に、ハンドリング特性があるが、TMAX530にもこのフィロソフィーがしっかりと継承されているのだ。こう聞くと倒立式は良いコト尽くしだが、コストが高いので、スーパースポーツやオフロード、競技用マシンなどの、特に操縦性を重要視するバイクに取り入れられている。

 ブレーキも強化され、フロントブレーキのキャリパーには、対向4ピストンのラジアルマウント式を新たに採用。267mmのディスクブレーキをダブルで装着し、高い制動力と良質な操作フィーリングを実現させ、全モデルABS装着となる。また、最適な剛性バランスを追求した、アルミ製ダイヤモンドフレームなど、スポーツモデルの技術を惜しみなく投入しているのはTMAX530くらいだろう。

 いや、他のスクーターと比較することがおかしいのかもしれない。何度もしつこいようだが、TMAX530はビッグスクーターではなく、スクーターのカタチをしたスポーツバイクなのだ。そう考えると、この走りに特化した贅沢な装備は納得がいく。

 気になる価格だが、「TMAX530 ABS」が105万8400円(税込み)。「TMAX530 ABS IRON MAX」が109万800円(税込み)で、国内で年間800台の販売を予定している。スクーターなのにツーリングやワインディングも楽しめ、街中での使い勝手も良い。そんなニッチな市場でマニアックな製品を作り、新たなライダーを開拓するヤマハの狙いが、このTMAX530から伺える。(編集担当:鈴木博之)

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