従来に比べ2桁以上多くの原子数を扱える第一原理シミュレーション手法を開発

2014年12月10日 11:48

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今回の研究における計算手法を用いて行った、水溶媒中のDNAに対する第一原理シミュレーションによるスナップショット構造。原子の間に働く力は第一原理計算によって計算されている(物質・材料研究機構の発表資料より)

今回の研究における計算手法を用いて行った、水溶媒中のDNAに対する第一原理シミュレーションによるスナップショット構造。原子の間に働く力は第一原理計算によって計算されている(物質・材料研究機構の発表資料より)[写真拡大]

 物質・材料研究機構(NIMS)の宮崎剛グループリーダーらによる研究グループは、従来に比べ2桁以上多くの原子数を扱える大規模な第一原理シミュレーション手法の開発に成功した。

 物質を構成している原子の振る舞いは量子力学によって記述されており、第一原理シミュレーションによって計算をすることができる。しかし、従来の理論では、複雑かつ大規模な数値計算が必要となり、計算できる系のサイズが極めて小さい(通常数百原子程度)という問題があった。

 今回の研究では、極めて高い精度での数値計算を実現しうる新たな技術を導入し、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」や東京大学のスーパーコンピュータFX10を用いて計算をしたところ、従来に比べて2桁ほど上まわる3万原子を越える巨大系に対して第一原理シミュレーションを行うことに成功した。

 今後は、本研究手法によって巨大生体分子やナノ構造物質の原子・電子の振る舞い、複雑な界面における欠陥や不純物の制御方法を明らかにすることが可能となり、創薬や次世代デバイスの開発に役立つと期待されている。

 なお、この内容は12月9日に「Journal of Chemistry Theory and Computation」に掲載された。

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