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【コラム 吉原恵太郎】弁護士としての転落を示した貴重な懺悔録、「転落弁護士」(上)
【11月21日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■ 弁護士の不祥事は増殖、懲戒件数は横ばい
近頃、新聞等の紙面で弁護士の不祥事が取り上げられることが少なくない。
痴漢、預り金の横領、顧問弁護士のインサイダー取引…。筆者は、国内の事件数自体の減少傾向や弁護士の増員等が少なからず背景にあるような気がしてならない。
実際、弁護士の懲戒件数も以前に比べて高止まりの傾向にある。
2012年の懲戒請求の新受件数は3898件、懲戒処分件数は79件である(内訳:戒告54件、業務停止23件、退会命令2件)。また、2008年〜2012年の懲戒処分の平均は75件であり、2003年〜2007年の平均61.8件を上回っている(以上、日本弁護士連合会編著「弁護士白書2013年版」231頁より)。
もちろん、弁護士会もこのような状況に危機感を抱いており、現在、対象となる弁護士(登録1年目、満5年、満10年及びその後10年ごとに達した者等)に対して、倫理研修への参加義務を課している。
筆者も先日所属弁護士会の倫理研修を受講し、研修内容のレベルの高さに満足を覚えた。
しかし、筆者としては、懲戒処分による抑止、倫理研修の受講に加えて、全ての弁護士が、ある書籍を一読されることを強く薦めたい。それが、本稿のテーマである内山哲夫著「転落弁護士」(幻冬舎文庫)である(以下この著者を「内山氏」という。)。
■ 元弁護士の懺悔録
「転落弁護士」は、内山元弁護士による懺悔録である。
内山氏は1948年、東京で産まれた。中央大学を卒業後、警視庁に入庁するも、司法試験受験のため退職。そして1975年、司法試験に1発合格する。
弁護士登録後(司法修習30期)は、イソ弁期を経て、1980年に東池袋で弁護士1名・妻の事務員1名で独立開業に至った。
独立後数年は新進気鋭の弁護士として順調な生活を送る。しかし、天才詐欺師「ハマのマッちゃん」の私選弁護を受け、多額の報酬を得たことで、生活は一変。弁護士としての矜持も失われる。
この「ハマのマッちゃん」の色仕掛けによって夜の銀座にはまり、遊興費欲しさに数々の筋悪の事件をこなすようになるからだ。さらに事務所も銀座に移転し、散在に拍車がかかっていく。酒や女に費した金額はおそらく1億円を下らない。
こうなると、事件処理への情熱も減っていく。依頼者から複数の懲戒請求を受けるようになり、1990年2月、業務停止1年の処分を受ける。さらに同年、依頼者の母親の金銭5000万円を横領したとする業務上横領事件で逮捕されたことで、自ら所属弁護士会(東京弁護士会)を退会。妻とも離婚する。
■貧すれば、鈍する
しかし、保釈後も元弁護士の肩書や年齢が災いして就業もままならず、貧するようになり、今度は三菱重工への企業恐喝事件で事件屋として協力してしまう。そのため、先の業務上横領事件で執行猶予中の1994年、この三菱重工に対する恐喝未遂・既遂の被疑事実で逮捕され、1996年に実刑判決が下る。収監され獄中生活を送り、ヤクザに苛められる等した後、2000年に仮釈放で出所に至る…。
筋悪事件を手がけるうちにヤクザにボコボコにされたり、弁護士活動中の話だけでも十分にインパクトがあるが、さらに強烈なのは出所後の生活である。【続】
(編集部注)【コラム 吉原恵太郎】弁護士よ、いまこそ『転落弁護士』を読もう:弁護士としての転落の帰結を示した貴重な懺悔録(下)に続きます。
吉原恵太郎(よしはら・けいたろう)/弁護士
1976年、埼玉県春日部市生まれ。立教大学法学部卒、明治大学大学院修了。埼玉弁護士会にて弁護士登録し、交通事故、成年後見等を専門分野として多数の案件に取り組む。東京弁護士会に登録替えし、むくの木法律事務所のパートナー弁護士に就任。現在は日本の資本市場における少数株主の権利擁護活動にも力を入れている。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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