関連記事
安倍首相「完全に安全確認しない限り原発動かさない」の“完全”とは?
安倍晋三総理は今月6日の衆議院予算委員会で総理が9月に訪米した際に講演した内容について、自ら「日本は過酷な事故を経験したので、完全に安全を確認しない限り、原子力発電所は動かさないと申し上げた」と明言した[写真拡大]
原発再稼働。安倍晋三総理は今月6日の衆議院予算委員会で総理が9月に訪米した際に講演した内容について、自ら「日本は過酷な事故を経験したので、完全に安全を確認しない限り、原子力発電所は動かさないと申し上げた」と明言した。
みんなの党の柿沢未途議員が「総理は訪米で原発の安全が100%確認されない限り、再稼働は行わないと言われたと聞いているが、真偽は」と質したのに答えた。
「完全に」と言われれば、通常、「100%」の安全確認と同意に受け取るのが自然だが、安倍総理は答弁で「100%とは言っていない」と主張し、解釈が違うこと、つまり、安倍総理の『完全に安全確認ができるまで』とは「100%の安全確認ができなくても、原発再稼働は行う」意向を示すものになった。
「完全」とは何なのか、必要な条件がすべてそろっていること。再稼働での万一の過酷事故にも対応できる条件も含め、安全確保の条件がすべてそろっていなければ「完全な安全確認」とは言えないはずだ。
しかし、安倍総理の「完全」はそうではないらしい。2020年のオリンピック・パラリンピック招致のためのIOC(国際オリンピック委員会)総会での演説でも東京電力福島第一原発事故による高濃度放射性物質の汚染水について「汚染水はコントロールされている」「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と言い放った。『完全に』という言葉で汚染水被害がコントロールされていることを強くアピールした。
外交上の戦略はあるだろうが、少なくとも、この原発事故問題については誠実で、真実を発信し続けるべきだ。国内での呼びかけ、国外での呼びかけを同じものにするなら、原発再稼働については「世界で最も厳しい規制基準に適合したと原子力規制委員会が認定したものは、その安全性が確保されたと判断し、政府はこの原発の再稼働を進めることにしている」と演説すべきだろう。
「世界で最も厳しい規制基準」かどうかも野党各党議員からは疑問の声が相次いでいる。共産党の笠井亮衆議院議員は世界最高水準の規制基準というが「新規制基準は欧州連合(EU)の基準で実施されているものすら盛り込まれていない」例を今年8月7日の衆院特別委員会で指摘した。「欧州連合の加圧水型原発の規制基準では大型の航空機が衝突しても耐えられるように格納容器の二重構造が要求されているのに対し、日本の基準には要求されていない」などだ。田中俊一原子力規制委員長は「(既存の原子炉で)格納容器を二重にすることは不可能」と答えた。ならば、既存の原子炉はすべて廃炉にすべきだろう。不可能な部分は規制基準項目から除外して安全審査をされても、安全性が確保されたとは信じがたい。
加えて、地震国・日本の特殊事情を踏まえ、万一の過酷事故時の住民らの避難計画の実効性についても、計画内容に十分な議論と検証が必要だ。原子力規制委員会ないしは政府機関とは別の専門家らで構成する新たな第3者委員会にその役割を担わせることも検討すべきだろう。
再稼働第1号と目される九州電力川内原発についていえば、原子力規制委員会の田中委員長は「川内原発設置変更許可に当たって、運転にあたり求めてきたレベルの安全性が確保されることは確認されたということ」で、原発そのものの安全性を担保するものではない旨を6日の衆院予算委員会でも繰り返した。
「川内原発の稼働に対する安全性が確保されたことが確認された」という表現は、原発として稼働上生じるリスクの安全性が確保されているということで、これ以外の要因によるリスクは原子力規制委員会として責任を負えるものでもないということを意味している。
過酷事故時に原発そのものへの対応は事業者ができることを確認したと田中委員長は言い、確認は今後も続けていく考えを示した。しかし、住民の避難など原発の外の対応は地元自治体、警察、消防が中心になる。その対応能力の確認、確保は住民の安全・安心を担保するうえで原子炉の安全確保と同程度に重要だ。
30キロ圏内住民の避難対応能力の確保が確認できるまでは原発の再稼働は許されてはならない。それでこそ「世界で最も厳しい規制基準」であり、『完全に安全が確認された原発』に近づくのではないか。(編集担当:森高龍二)
■関連記事
・原発再稼働プロセスの最大限加速が必要 経団連
・九電川内原発再稼働は進める 小渕経済産業大臣
・完全に安全確認しない限り動かさないと総理発言
・川内原発 火山噴火対応全くできてない 江田氏
・原発再稼働進める考え、改めて明確に 安倍総理
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
スポンサードリンク