京大、ニホンザルが森に種をまく役割は年ごとに変化していることを明らかに

2014年10月3日 12:52

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ガマズミの果実を採食するニホンザル(京都大学の発表資料より)

ガマズミの果実を採食するニホンザル(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の辻大和助教らによる研究グループは、野生ニホンザルの種子散布特性を追跡調査し、種子の出現率と健全率という二つの特性が年ごとに変化していることを明らかにした。

 果実は哺乳類や鳥類など多くの動物に食物として利用されている一方で、それらの動物は飲み込んだ種子を遠く離れた場所で糞と共に排泄するため、種子の散布者としての役割を果たしている。果実の生産量は年次的に変化するため、それによって果実を食べる動物の食生や種子散布の効率にも影響を与えると考えられているが、この点について評価する研究はほとんどおこなわれていなかった。

 今回の研究では、ニホンザルが採食する果実種子の散布特性を5年間に渡って追跡し、合計388個の糞を分析した。糞に含まれている「種子の出現率」「種子数」「種子の健全率」「種子の多様性」を評価したところ、種子の出現率と健全率は大きな年次変化が起きていることが分かった。

 このことから、ある植物種にとってサルに自らの果実(と種子)を食べられることは、ある年では有利に、別の年では不利にはたらいている可能性がある。果実を提供する植物と霊長類の結びつきは固定的ではなく、それぞれの年の食物環境に応じて柔軟に変化すると考えられる。

 辻助教は「温帯地域の森林は人為的・自然のかく乱に対して速やかに回復しますが、この研究で示されたような、サルと植物のゆるやかな結びつきが、温帯林の長期的な安定性を保つ要因となっている可能性があります。(中略)今後、長期的な視点にたった研究が各地で実施されることが望まれます」とコメントしている。

 なお、この内容は10月1日に「PLoS ONE」に掲載された。

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