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【コラム 山口亮】大渕愛子事件から見える、元公僕や元国士が国民の利益を忘れる理由
【9月21日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■大渕愛子弁護士に「被害者の会」結成
元依頼者らによって「被害者の会」が結成された大渕愛子弁護士は、月額顧問制の顧問料を取っていたことが問題とされている。
無論、個人でも弁護士(やその他の職業、例えばフィナンシャルプラナー)と月額顧問料を支払う顧問契約を結ぶことはありうるだろうから、双方が義務や委任内容について理解・同意していれば、月額報酬の顧問契約を結ぶこと自体は、すなわち弁護士倫理規定に触れるなどの問題があるとは必ずしも言えない。
しかしながら、太田真也弁護士(元依頼者側代理人)が指摘するように、もし工務店と月額顧問料を支払う契約を結べば、建物を建てるのが長引くほど顧問料を払わなければいけない期間が長くなるのと同じ現象が起きる。
男女問題解決の弁護士代理人(エージェント)と依頼者(プリンシパル)の間で、事件の解決が伸びれば伸びるほど、依頼者にとっては不利なのに、顧問契約期間が長くなって弁護士の収入が増える、構造的な利益相反関係が存在することになる。
この種の依頼者と代理人の関係に関する問題は、「プリンシパル=エージェント問題」といわれ、経済学や政治学の分野でも様々な議論が蓄積されてきている。
■代理人が依頼者の利益を犠牲に
少し視点を変え、一般国民と官僚や国会議員との関係を考えると、国民の代理人たる官僚や国会議員に対して、われわれは立法活動などの業務を依頼し、官僚や国会議員は、本来は国民の利益のために働かなければいけない義務を負っているはずだ。
実際には、代理人が依頼者の利益ではなく、むしろ依頼者の利益を犠牲にして、代理人自身の利益を図ろうとする誘因が常に存在するし、情報の非対称性や監視コストなどのために、依頼者が代理人を常に思うようにコントロールできない。
このように、政治経済学などの分野では、いかに代理人たる国会議員や官僚を、国民のために働かせることができるかという制度設計等についての議論や研究が行われてきている。
■国士の気概を失った元公僕たち
この点、先の国会で成立した改正会社法で、以前の小生のコラム「会社法マフィアの実情」(※)で指摘した坂本三郎氏(法務省民事局参事官)は、もともと裁判官から出向した民事局付検事というキャリアであることから、本当は官僚ならば国民に仕えなくてはならない立場であるはずだ。
次の人々の名前を出自に気をつけて見てほしい。
葉玉匡美氏(TMI法律事務所、元法務省民事局付検事)、高山崇彦氏(TMI法律事務所、元東京地裁民事8部判事、元法務省民事局付検事)、郡谷大輔氏(西村あさひ法律事務所、元法務省民事局付検事)、太田洋弁護士(西村あさひ法律事務所、法務省民事局へ以前出向)、山本憲光氏(西村あさひ法律事務所、元法務省民事局付検事)、小館浩樹氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所、法務省民事局へ以前出向)、豊田祐子弁護士(現野村ホールディングス株式会社グループ法務部次長、元西村あさひ法律事務所、法務省民事局へ以前出向)、石井裕介弁護士(森濱田・松本法律事務所、法務省民事局へ以前出向)、岩崎友彦弁護士(長島・大野・常松法律事務所、法務省民事局へ以前出向)、泰田啓太氏(桃尾松尾難波法律事務所、元法務省民事局付検事)・・。
多くの過去の会社法立法担当者が、いわいる企業法務を担当する法律事務所へ天下りをし、あるいは出向元の法律事務所で、作った法律の運用や解釈を、飯のタネにしていることを考えると、坂本参事官が法律の不備を意図的に作り出して、自らが法律事務所にパートナー弁護士として天下りした後に、自分が稼ぎやすくするインセンティブを持ちうることに注意しなければならない。
■密室レクを公開すべし
また社外取締役の存在自体も、本来の趣旨とは離れて、官僚や弁護士の天下りポストを増やすだけだったら大問題だから、エージェントたる官僚の動向は、きちんとメディアが観察し、時に批判をする必要があるのだ。
実際に坂本参事官が国会議員に行っているレクは、密室で行われており、国民はその動向を観察することは不可能だ。だから、政策形成の主要な議論は、霞が関の立法機能から、国会で公開の場で行うことが望ましいということが、一般的に言えるだろう。
このように、「プリンシパル=エージェント問題」は、様々な分野・局面で自覚的に意識すべき問題だ。【了】
※会社法マフィアの実情(下)(http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140526_13)
やまぐちりょう/経済評論家
1976年、東京都生まれ。東京大学卒業後、現在、某投資会社でファンドマネージャー兼起業家として活躍中。さくらフィナンシャルニュースのコラムニスト。年間100万円以上を書籍代に消費するほど、読書が趣味。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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