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【コラム 新井誠一】政策評価制度10年の軌跡(2)
【8月26日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
■政権交代を経て政策評価の機能強化へ
21世紀の到来とともに、我が国の行政のプラン偏重を是正するために政策評価制度が導入されて約12年が経過した。
筆者は、平成11年に当時の総務庁行政監察局に設置された「政策評価等推進準備室」に在籍し、ガイドラインの策定など政策評価制度の導入に向けた設計に携わったが、当時は、国レベルでの評価制度は存在しておらず、その設計を検討するに当たっては、いわば「ゼロベース」からスタートするに等しいという相当の困難を伴う状況であった。
前回は、制度導入から法施行3年後の全面見直しを経たいわば「評価新時代」に至るまでの流れを振り返ったが、今回は、政権交代を経て事業仕分けから政策評価の機能強化に向けた流れを俯瞰したい。
■行革評価機能の抜本的強化ビジョン
平成21年11月に実施された「事業仕分け」において、「政策評価、行政評価・監視」がテーマに取り上げられた。その結果、「抜本的な機能強化」との結論が出されたが、これは他にない異例の結果と言うことができ、それだけ政策評価制度に対する期待が大きいことの表れであったと考えられる。
そこで、事業仕分けを受け、直ちに総務省で行政評価機能を強化するための具体策の検討に入り、平成22年1月、「行政評価機能の抜本的強化ビジョン」を取りまとめ、同日の閣僚懇談会及び行政刷新会議において原口総務大臣が説明した。
具体的には、情報公開のガイドライン新設や成果志向の目標設定を推進することなどを盛り込んだ。
■経済財政諮問会議で政策評価が再びテーマに
事業仕分けは、その後、各府省が自律的に行うことを重視する行政事業レビューに継承されたが、事業効果をチェックする行政事業レビューと事業の上位の施策レベルでの効果をチェックする政策評価の連携を強化することとし、両者の共通シートを導入するなど相互の情報を活用することでタイアップすることとした。
また、平成24年に発足した自公政権で復活した経済財政諮問会議において、政府内の実効性あるPDCAサイクルの確立の観点から政策評価が再びテーマとして浮上した。
これらを踏まえ、総務省行政評価局では、目標管理型の政策評価制度の充実、各府省の評価の標準化・重点化に取り組んでいる。
政策評価制度は、わが国でスタートしてから10年以上が経過した。この10年間で、政策評価制度をめぐる環境は、各府省や総務省による着実な取組により大いに進展し、国の行政運営の中に、定着するに至ったことは大きな成果であったと言える。
この間、制度を所管する総務省はもちろん、官邸、経済財政諮問会議、国会、学界など各方面からの問題提起を受け、一つ一つ課題をクリアし、発展過程を迎えた。こうした流れは、2度にわたる政権交代においても何ら変わることはなく、むしろ強化されたと言える。
■評価新時代に突入
政策評価制度は、平成17年の全面見直しを経ていわば「評価新時代」に突入した。この新たなステージでは、従来とは一線を画し、評価対象の選定、評価レベルの向上、評価結果の政策反映といった各段階でこれまでよりバージョンアップした取組が求められる。これに伴い、政府の取組に対する各方面からのチェックもより厳しくなることが想定され、説明責任を果たす必要性も一層増大すると考えられる。
しかし、制度導入に向けてはゼロベースからの検討を余儀なくされたことを考えれば、中長期的にみて政策評価制度は着実に進化・発展を遂げてきており、相当なノウハウが蓄積されてきていると考える。
今後も、政府一丸となって、「評価新時代」にふさわしい取組が実践されることが期待される。【了】
注:本稿は、個人として投稿したものであり、組織の見解を代表するものではありません。
あらい・せいいち/1992年に東京大学法学部を卒業後、総務省(旧総務庁)に入省。大臣官房で国会関係業務に携ったほか、主に行政管理、行政評価を推進。2001年の中央省庁等改革の際、政府における政策評価制度の導入に参画。また、2度にわたり内閣官房に出向し、行政改革の推進を担当。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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