目が見えなくても、手の動作を認識する脳ネットワークは活動することが明らかに

2014年8月21日 18:18

印刷

実験に使用した模型を示す図。実験参加者はMRIスキャナー内で模型に触れて、手を触った場合はその動作を、急須や車を触った場合はその種類を識別した。急須や車に比べて手の識別で強く活動する脳部位を、Action Observation Network (AON)として特定した。

実験に使用した模型を示す図。実験参加者はMRIスキャナー内で模型に触れて、手を触った場合はその動作を、急須や車を触った場合はその種類を識別した。急須や車に比べて手の識別で強く活動する脳部位を、Action Observation Network (AON)として特定した。[写真拡大]

 自然科学研究機構は、生まれつき目が見えなくても、動作を認識する脳のネットワークは活動することを明らかにした。

 私たちは視覚情報で他者の動作を理解・学習するが、パラリンピック選手のように生まれつき目が見えなくても視覚以外の情報で動作を理解・学習することは可能である。

 今回の研究では、視覚障害者と晴眼者それぞれ28名を対象に、手の動作・急須・車の模型を当てる実験をおこない、急須や車の認識時に比べて手の動作の識別時に強く活動する脳部位を「Action Observation Network (AON)」として特定した。

 その結果、視覚障害者も晴眼者と同じようにAONの一部が活動していることが分かった。この結果は、AONが、視覚を使った経験の有無にかかわらず(生まれつき目が見えなくても)発達することを示している。

 これまでの発達心理学では目が見えることを前提とした理論が提唱されてきたが、目が見えない場合、「どのように他者のことを理解し、学ぶ能力が発達するのか」に関してはよく分かっていない。これに対して今回の研究成果は、「なぜ目が見えなくても他者の手の動作を認識・学習することが可能なのか」を説明し、目が見えない場合の社会能力発達を考えるための一助になることが期待される。

関連記事