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政治家に訊く:馬淵澄夫民主党衆議院議員(1)「与党の支持率は必ず下がる」
【8月14日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
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「歴史的な敗戦」となった第46回総選挙からまもなく2年が経つ。「二度と民主党が政権を取る日は来ない」、「党名変更以外に再生の道はない」とまで言われたが、ここにきて、若干その雰囲気は変わりつつある。そこでSFNは、民主党選挙対策委員長の馬淵澄夫衆議院議員に、3回にわたりインタビューを行った。
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■来年の統一地方選が最大目標のひとつ
横田 7月13日の滋賀県知事選挙では、三日月大造前民主党衆議院議員が、自公推薦の小鑓隆史氏、共産推薦の坪田五久男を破って初当選を飾りました。今年、知事が任期満了を迎える自治体は滋賀県など10府県ですが、自公VS民主という意味で、最も注目を集めていたのは、滋賀です。そこで勝利で飾れたのは大きかったのでは?
馬淵 当初、劣勢という見方もされていた中で、三日月氏が与党推薦候を破り勝利したことは間違いなく大きかったと思います。
昨年九月に選対委員長を拝命して以来、来年の統一地方選挙を最大の目標の一つと見据えてきました。滋賀県知事選挙というのは、その過程にある重要な『中間選挙』でした。
その滋賀で勝利できたことは、私たちが、自分たちの思い描いてきた「選挙の形」を実現する方向に向かって進んでいる、そう実感できたという意味でも良かったと感じています。
もちろん勝利はしましたが、民主党の党勢回復が勝因ではないということは肝に銘じているつもりです。むしろ、自民党の多重敵失にも助けられたというのが本当のところです。
しかし一方で、そもそも、与党はエラーから逃れることはできない立場です。与党の支持率はどんなに高くても下がっていく。09年の政権交代直後の民主党を思い出していただければわかると思います。
政権を担い、時々の課題に常に直面する与党は、野球で言えば、9回まで「守備」を続けなくてはならない。つまり、得点はない中、ひたすら堅い守備を続けるしかない厳しい立場なのです。しかし、綻びは必ずどこかで生じる。その意味で、今回の多重敵失は偶然ではなく「必然」だったのです。
今回、敵失としてまず挙げられるのは、石原(伸晃)環境相の被災者の心情を無視した「金目発言」、さらには、都議会や国会で起きた自民党議員による「セクハラヤジ問題」です。さらに、決定的だったのは、7月1日に安倍政権が集団的自衛権行使について強引に閣議決定を行ったことです。
これらが、昨年末の特定秘密保護法案の強行採決、首相靖国参拝、武器輸出三原則の緩和等の一連の流れと相まって、政権の強引さ、横暴さ、右傾化に対する有権者の不安という形で一気に噴き出してきた。
■草の根自治VS中央集権・言いなり自治
野党としては、与党がこうしたエラーをした時に、有権者の不満・不安の受け皿になれるかどうかというのが重要で、今回、三日月氏と三日月氏を支援した「チームしが」は上手くそれが出来たのです。
なぜか。
ひとつには、「選挙の構図」がつくれていたことが大きかったと見ています。
三日月氏の出馬表明が5月9日で、「チームしが」の事務所開きは、24日でした。本当はもう少し早く出馬表明したかったのですが、野党を一本化した上で、嘉田(由紀子)前知事の後継という立場で、表明したかった。三日月氏をはじめ、滋賀の地方組織や関係者の皆さんが根気よく、粘り強く、真摯に取り組んだ結果、可能になったのです。
その上で、相手候補が元官僚ということもあり、「草の根自治」対「中央集権・言いなり自治」、「草の根選挙」対「組織型選挙」といったはっきりした構図をつくり、有権者に選択肢を提示できたことも功を奏したと思います。
次に、生活に密着した課題の「争点設定」がつくれたことも大きい。
子育て、地域産業、雇用、高齢者問題といった政策をわかりやすく伝えることで、民主党らしい生活者目線・地域主権型のメッセージを有権者にアピール出来た。これは、民主党秘書団、支部長、議員をはじめ、のべ844名を滋賀に投入し、街をくまなく歩き、有権者一人ひとりの「生の声」を拾い、それを反映した上でのメッセージ設定でもありました。
相手候補は、中央の方針に従い、「アベノミクスをガンガンやる」ということばかり強調していたので、逆に違いが鮮明になりました。
■民主党は再生する
つまり、1、必ずおこる与党の敵失 2、その際に受け皿となる選挙組織づくり 3、生活に密着した課題の争点設定----の3つが揃えば、1人区でも勝てる。
党勢の挽回とまでは言えませんが、潮目は変わりつつあるし、我々が総選挙後に反省し、ひとつひとつ地道に取り組んできたこととの結果が出始めていると実感しています。また、政権の右傾化や強引さに対する不安は、間違いなく、有権者の間に広がっており、その受け皿が求められている。
私は、民主党は再生すると確信しています。
横田 なるほど。次回は、「生活の課題」という部分をもう少し突っ込んでお聞きしたいと思います。
ところで、明日は終戦記念日です。安倍総理は15日の靖国参拝を見送る意向を固め、自民党総裁として私費で玉串料を奉納する方向です。
馬淵 私は、九段宿舎に住んでいた時は毎日、靖国神社に参拝に行っていました。靖国神社崇敬奉賛会の終身正会員でもあります。また、先日87歳で亡くなった父は陸軍士官学校最後の61期生でしたから、私自身、国や家族や愛する人のために命を落とした方々の英霊を祀る靖国神社を非常に大切に思っている。
それでも、今、この国際情勢のもと、政府の立場に立つ政治家が参拝することには慎重さが求められると感じます。
ましてや総理大臣という立場ならば余計に、参拝することが国際社会の中で様々な軋轢を生むことがわかっているのですから、相当に慎重に判断しなくてはいけない。
横田 昨年12月26日に、安倍総理は靖国神社に参拝しています。
馬淵 今、国民が求めているのは「景気回復」です。国民は、安倍政権には、経済問題を最優先にやってほしいと願っている。私は、安倍総理が金融緩和の後押しをし、デフレ脱却に向けた取り組みをすすめていることは評価しています。
しかし、一方で、去年の靖国参拝で経済が大きなマイナスの影響を被ったことも事実なのです。
中国に多くの日本企業が投資していることは誰もが知っている。実際、12月26日から株価は低迷し始めた。市場は、安倍首相にとって経済政策は、実は「二の次」なのではないかと疑りはじめている。当たり前の自分の価値観と総理大臣としての振る舞いが、国際社会にどのようなフリクション(摩擦)を起こし、それがどのような影響をもたらすのかを、もっと熟慮してもよかったのではないでしょうか。【了】
まぶち・すみお/民主党衆議院議員
1960年、奈良県奈良市出身。横浜国立大学工学部土木工学科卒。上場企業役員を経て、2003年、衆議院議員初当選(奈良1区)。現在4期目。内閣総理大臣補佐官、国土交通大臣・内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)などを歴任。現在、民主党選挙対策委員長。著書に「原発と政治のリアリズム」(新潮新書)がある。HPにhttp://mabuti.net、公式FaceBookにhttps://www.facebook.com/sumio.mabuchiがある。
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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