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2014年夏型の業績相場は二の矢、三の矢が続く走力重視のカウンターアタック展開=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
これも確かに業績相場なのだろう。上値が重くなった相場環境下で、株価が急騰する銘柄が続出し、それが業績の上方修正を材料にしていたからだ。これを端的に象徴していたのが、前週末11日のトーヨーアサノ <5271> (東2)の後場の株価推移である。同社株は、11日後場寄り付き直後の13時に今2月期第1四半期決算の開示に合わせて、第2四半期累計業績と2月通期業績を上方修正し、株価は、一気にストップ高した。この修正発表からストップ高までの所要時間は、わずか3分弱と高い瞬発力を発揮した。
さらにその歩み値を詳しく検証すると、前場は、前日変わらずの205円の一本値で出来高は2000株、後場も、値付きがたった4回で出来高も4000株の出来高にとどまっていたのが、業績上方修正とともに買い物が殺到し、後場の出来高は、115万株に膨張した。しかも、このストップ高のあと、ストップ高水準で買い物が細るとみるや、今度は逃げ足も快速で株価は急落し大引けでは、30円高と上げ幅を縮めた。
このヒット・アンド・ウエアーの投資スタイルは、あたかも7月13日に決勝戦を戦うサッカーのワールドカップで注目を集めた中南米・南米各国代表のカウンター攻撃を彷彿とさせるところがある。このカウンター攻撃は、自陣ゴール前では貝のように守備ブロックを固め、いったんボールを奪った途端に選手全員が揃って相手ゴールを目指して猛ダッシュすることを基本としている。しかも、その走力は圧倒的で、相手守備陣を一気に置き去りにしてゴールに迫り、攻撃が終わりと、再び、選手全員が全速力で自陣に帰陣する。その徹底的な戦法は、グループリーグで優勝候補の欧州各代表を蹴落とす番狂わせを演じており、足先は小器用でもリスク回避の横パスに終始し、グループリーグで1勝もできなかったわがザック・ジャパンの「お坊ちゃんサッカー」には到底及びもつかない。
トーヨーアサノの株価急騰・急落が、この中南米・南米各国チームのカウンター戦法と二重写しになるとすると、2月期決算会社の第1四半期業績発表から3月決算会社の第1四半期業績発表と続くなかで、本格化が期待される業績相場は、2014年夏型の新スタイルの様相を帯びるはずである。これはトーヨーアサノだけとどまらず、同じ11日に好業績評価でブロッコリー <2706> (JQS)、エスクロー・エージェント・ジャパン <6093> (JQS)、竹内製作所 <6432> (JQS)もストップ高して当日のストップ高11銘柄の3割強を占め、逆に今8月期純利益を下方修正したファーストリテイリング <9983> が、急反落したことにも明らかである。
このカウンター攻撃的な相場展開は、今夏の業績相場だけではなく、昨年末の日本のモメンタム株といわれるテーマ株物色にも色濃く滲み出ていた。ロボット関連株にしろ、格安スマホ関連株にしろ、燃料電池自動車関連株にしろ、一過性の人気で終わらず、何回も揺り戻して人気化しその度ごとに買い参加者を拡大させていた。ボールが前に転がった途端に投資家すべてが驚異的な走力でゴール前に迫って兎に角、攻撃で終わらせ、ボールがキーパーにキャッチされるとみるや、一目散に帰陣する上下動を繰り返し、二の矢、三の矢の攻撃のチャンスを窺うまるで株式市場がサーカー・ピッチ上にあるかのような映像を連想してしまう。
今後の業績相場はどう展開するか、サブライズ銘柄にどの銘柄が浮上するか軽々には予想が難しい。従来の業績相場が、主力株の業績を証券アナリストの市場コンセンサスを上回ったか下回ったかで判断してスタートしており、その可能性を捨て切れないものの、今夏は、これに加えて証券アナリストがカバーしていない上場市場や企業規模、値ごろなどを問わず拡散し多面展開する可能性があるからだ。決算発表に注意は怠れず、ボールが動く気配を感じとったら、全速力でダッシュできる準備をしておく必要がある。
このような相場展開では、有望銘柄をセレクトは至難の技である。そこで次善策として、この6月以降に業績の上方修正をテコにカウンター攻撃の第1段相場を展開した銘柄に二の矢・三の矢相場を期待して業績相場の再発進を先取ることを提案したい。もちろん、第1弾攻撃で高値に張り付いた投資家も多いだけに、この戻り売りをこなせるだけの投資価値を持った銘柄を精査する必要があるが、案外、投資妙味のある銘柄が導き出されるのである。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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