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【コラム 山口亮】小保方問題が明白にした日本の深刻な安全保障問題(上)
【6月19日、さくらフィナンシャルニュース=東京】
小保方晴子氏の「論文ねつ造疑惑問題」は、日本の安全保障問題としての側面もあることを、再認識することが必要だ。
下村博文文部大臣も、「理研のガバナンス強化」「ガバナンス改革」を盛んに強調するが、小保方晴子氏の一連の論文ねつ造疑惑問題は、我が国の科学技術政策の問題も孕む。
大学院以上の教育体制の仕組みの差が課題を浮き彫りにしている。
米国と日本の差異を上げれば、
(1)大学院以上の教育の生産性が高い
(2)ペア・レビューという相対的で公正な研究費配分システムが確立されている
という点が、特に重要になる。
インターネットをはじめとした情報科学も、生命科学分野のほとんどの創薬も、新しい科学技術の概念は、ほとんど米国発である。
もちろん日本人でも山中伸弥教授のような優れた研究者もいるが、実際にノーベル賞学者の割合を見れば、国籍や出身は問わず、在米の研究者ばかりだ。日本人の受賞者も、在米時代の研究か、米国での研究経験をもとに授賞理由となる成果を実現しているケースが圧倒的に多い。
米国だけでなくカナダも含んだ(以下、北米)の大学院の研究者養成システムが優れていることが、このような差を生む原因となっている。
北米の一流大学の博士課程では、大学院生として入学すると、徹底的に競争させられ、訓練を受ける。北米の大学院教育は、優れた成果を出すために、優秀な研究者を選抜していく仕組みが出来上がっている。
博士課程では、大学院生は、奨学金等をもらうか、リサーチアシスタント(RA)やティーチングアシスタント(TA)を兼務して、授業料を免除され、生活費をもらうのが一般的だ。考え方としては、大学院生が博士課程に入学するのは、いわいる「就職」に近く、世界中の優秀な学生から、入学希望の応募がある、極めて競争的なプロセスだ。
インドや中国、イランやバングラディッシュ、南米、東欧をはじめとする旧共産圏などからも、優秀な学生が、北米の大学院博士課程へ応募してくるのは、経済的にも保証されるからだ。彼らが無事、アメリカの名門大学で博士号を取得することができれば、少なくとも米国における中流の生活を手に入れることができる。本国での暮らしと比べた時、かなりのレベルアップになる。
しかも、大学院入学や研究者の採用では、著名な研究者からの「推薦状」が、選抜においては重要な要素となる。
名門と言われる博士課程では、成績だけで見ると、候補者は採用できる枠よりも多い。そこで重要なのか「推薦状」だ。著名な研究者(あるいは業績を上げつつある若手の研究者)が、どれだけ強く推薦しているかというでしか、差がつかない。
博士課程の1年目には、コースワークと言われる基本科目の授業などがひたすら続き、「殺人的」とも評される宿題や課題の山が、永遠に続く。1年目のコアの科目については、試験を突破しなくては博士課程の候補者にもなれず、ドロップアウトしていく。
その後、博士課程の学生は、指導教官を探して、その指導の下に、博士論文を執筆していく。博士課程の論文作成は、大学院生といえども、一流の研究者となるために、一定程度のオリジナリティーが求められる。野球に例えれば、マイナーリーグからメジャーリーグに選抜されていくようなプロセスで、一定数の落第者が前提とされる過酷な世界だ。(【コラム 山口亮】小保方問題が明白にした日本の深刻な安全保障問題(下)に続く)【了】
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※この記事はSakura Financial Newsより提供を受けて配信しています。
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