NIBB、ミドリゾウリムシとクロレラの相利共生における遺伝子変化を解明

2014年6月12日 19:39

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クロレラ共生・非共生時の宿主ミドリゾウリムシの遺伝子発現変化を示す図。ミドリゾウリムシのひとつひとつの遺伝子が点でプロットされている。X軸は遺伝子発現強度を示し、右に行くほど発現量が高いことを意味する。Y軸は発現の変動の倍率を示し、0は変動がないことを意味し、0から上下に乖離するほど変動が大きいことを意味する。赤のプロットは統計的に有意に発現の変動が認められた遺伝子。(基礎生物学研究所の発表資料より)

クロレラ共生・非共生時の宿主ミドリゾウリムシの遺伝子発現変化を示す図。ミドリゾウリムシのひとつひとつの遺伝子が点でプロットされている。X軸は遺伝子発現強度を示し、右に行くほど発現量が高いことを意味する。Y軸は発現の変動の倍率を示し、0は変動がないことを意味し、0から上下に乖離するほど変動が大きいことを意味する。赤のプロットは統計的に有意に発現の変動が認められた遺伝子。(基礎生物学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 自然科学研究機構の基礎生物学研究所(NIBB)は、クロレラとの相利共生によるミドリゾウリムシの遺伝子発現の変化を明らかにした。

 ミドリゾウリムシの細胞内には約700個のクロレラが共生している。ミドリゾウリムシは二酸化炭素や窒素分を、クロレラは酸素や糖をお互いに与え合っており、このような双方にメリットのある共生を「相利共生」と呼んでいる。ミドリゾウリムシとクロレラは真核生物同士の細胞内共生の仕組み解明に有用な研究材料として有望視されているものの、遺伝子に関する情報はほとんど明らかになっていなかった。

 今回の研究では、まずRNA-seqと呼ばれる技術で10,557個のミドリゾウリムシ遺伝子を解明した。さらに、クロレラと共生しているミドリゾウリムシと共生していないミドリゾウリムシの遺伝子発現の違いを調べたところ、6,698個の遺伝子で発現が変化していることが分かった。

 共生によって発現量が変化する遺伝子群には、ストレスタンパク質遺伝子や抗酸化作用をもつグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子などが含まれていた。これらの遺伝子が、共生の成立と維持にどのように関与しているのかは、今後の研究課題となる。

 ミドリゾウリムシとクロレラに見られる共生は、地球上のいたるところで繰り返し起こっており、生命進化の重要な要因のひとつとして考えられている。今回の研究成果は、そうした様々な共生の成立機構を遺伝子レベルで理解することに繋がると期待されている。

 なお、この内容は3月10日に科学雑誌「BMC Genomics」に掲載され、アクセス数が多い注目論文としてHighly accessed articleの認定を受けた。

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