「LINE」成功の真実(下)

2014年6月5日 11:40

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記事提供元:さくらフィナンシャルニュース

【6月5日、さくらフィナンシャルニュース=東京】

 ■全員がゴールを狙えるサッカー型組織

 LINEの特徴として、もう一つよく言われることがある。それはLINEが“サッカー型の組織”であるということだ。

「一般的な企業は、開発なら開発、営業なら営業とポジションが決まっている言わば“野球型”です。各部署間で連携はするけれども、基本的に“守備範囲”は決まっているんです。しかし、LINEでは皆それぞれにポジションはあるものの、ここからここまでという守備範囲が決まっていません。だから、その場の状況に応じてフォーメーションを瞬時に変化させる必要がありますし、シュートのチャンスがあれば、誰でもどんどんシュートを打って構わない。極端な話、ゴールキーパーだって自分で得点できる可能性がありますよね。そんな体制なので“サッカー型”と言っています」

つまり、全員が自分で考えて動き回り、サービスを創造していける組織体制が構築されているのだ。
ここ数年、企業の人事を取材すると「自走できる社員が欲しい」という話をよく聞くが、LINEには、まさにこうした人材が揃っているということだろう。

「LINEは走りながらさまざまな試行錯誤を繰り返していくので、朝令暮改が日常茶飯事。それらを受け入れながら、自ら積極的かつフレキシブルに対応できる力が社員には求められています。ですから、柔軟性やスピード感をもった社員はとても多いですよ」

変化に柔軟に対応し、楽しめる社員が多いから、LINEは次々とチャレンジングなサービスを提供できるのだ。

 ■海外でより存在感を示せるかが今後のカギ

 現在、「LINE」の代表的なサービスと言えば、真っ先に無料通話やスタンプ、ゲームを思い浮かべる人がほとんどだろう。事実、LINEが5月に発表した2013年通期の業績を見ても、総売上343億円のうち約60%をゲームが、約20%をスタンプが占めている。その他は企業の公式アカウント料などだ。

とはいえ、欧米で強いFacebook傘下の「WhatsApp」、韓国での「Kakao Talk」、中国での「微信(WeChat)」など、強力な競合他社がほぼ独占状態にあるような地域でこれから存在感を示していくためには、新たなサービスが不可欠だ。そこで、LINEは、2月に「BEYOND LINE(LINEを超える)」を掲げ、3つの新サービスを発表した。

1、LINEから国内・国外問わず、一般の固定・携帯電話番号に低料金で電話をかけられる「LINE 電話」
2、公式アカウントの各種機能を企業向けにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)で提供し、各企業がカスタマイズして活用できる「LINE ビジネスコネクト」
3、個人・企業を問わず、LINEユーザーなら誰でも自分が制作したスタンプを「LINE ウェブストア」上で販売できる「LINE Creators Market」だ。

「今回の新サービスでは、これまで「LINE」の中だけで行っていたコミュニケーションを、外にも開いていくことで、「LINE」ユーザー以外にも利用価値を訴求するのが狙いです。国内での利便性強化に加え、海外ではこれらの新サービスを成長ドライバーとして、ユーザー基盤の拡大を図っていきます」

これらの新サービス挑戦の結果を論じるのはまだ早い。ただ、ここまで見てきた強力な組織力を考えると、次々と新たなサービスが出てくるのは想像に難くない。

まだまだLINEからは目が離せそうにない。【了】

 岡野 学(おかの まなぶ)/フリーライター
1976年東京都生まれ。自動車雑誌の編集を経てフリーライターに。モノ、飲食、スポーツ、旅行など、執筆分野は多岐にわたり、ここ数年は企業・社長取材も多くこなす。さくらフィナンシャルニュースでは、主に経済分野のストレートニュース記事を担当している。

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