カリフォルニア大、学習による脳神経の発達機構を明らかに 神経活動を可視化

2014年5月8日 17:41

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学習における活動パターンの変化を示す模式図。学習初期には、試行ごとにさまざまな神経活動のパターンと運動パターンが試される。学習の過程でこの活動と運動の関連性が改められ、学習された運動パターンに特化した活動パターンが試行ごとに再現されるようになる。

学習における活動パターンの変化を示す模式図。学習初期には、試行ごとにさまざまな神経活動のパターンと運動パターンが試される。学習の過程でこの活動と運動の関連性が改められ、学習された運動パターンに特化した活動パターンが試行ごとに再現されるようになる。[写真拡大]

  • a) 学習中に経時的に見た樹状突起の例。新たにスパインが形成される(矢じり)一方で、除去されるスパイン(矢印)も見られた。
b) 樹状突起スパインの学習中の動性。運動学習前はスパインの数に大きな変化は見られないが、学習を開始すると、運動野内で新たなシナプス結合が形成され、運動野の神経回路が変化することが分かる。学習初期に新たなシナプスが形成され、数日遅れて古いシナプスが間引かれていき、最終的な総数は変わらずに学習に関連した回路が保たれる。

 カリフォルニア大学の小宮山尚樹アシスタントプロフェッサーらは、運動に関係のある脳の部位「大脳皮質運動野」の神経活動を可視化することに成功し、学習過程における脳神経の動きを明らかにした。将来的にはアルツハイマー病などの治療に役立つ可能性があるという。

 大脳皮質運動野の神経活動は、実際の運動に大きな関係があると考えられていたが、実際にどのような影響を与えているのかは解明されていなかった。

 今回の研究では、まず、マウスがレバーを決まった方向に動かすと水が与えられるという実験をおこない、大脳皮質運動野で起きている活動を視覚化することに世界で初めて成功した。

 さらに、この手法で実験をおこなうことによって、行動の学習が進むに従い、運動のパターンと脳内で起きている神経活動のパターンが一致していくことや、行動学習中にはシナプス結合の入れ替えが起きることを明らかにした。

 運動学習時の脳神経のメカニズムが明らかになったことで、将来的にはアルツハイマー病などの治療に役立つ可能性がある。

 この研究成果は、5月4日発行の英国科学誌「Nature」に掲載されている。

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