九州大学、受精卵が分裂を開始するメカニズムを解明 不妊治療法の開発に期待

2014年5月1日 19:22

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アフリカツメガエル未受精卵の細胞抽出液―Ube2Sを除去したものと除去していないもの(対照)―に精子核とカルシウムを添加して試験管内で人工受精させた結果。対照では核膜が形成され、細胞分裂が開始されているが、Ube2Sを除去したものでは核膜は形成されていない。

アフリカツメガエル未受精卵の細胞抽出液―Ube2Sを除去したものと除去していないもの(対照)―に精子核とカルシウムを添加して試験管内で人工受精させた結果。対照では核膜が形成され、細胞分裂が開始されているが、Ube2Sを除去したものでは核膜は形成されていない。[写真拡大]

  • 受精卵の分裂開始の分子メカニズムを示す図。未受精卵ではEmi2の結合によってAPC/Cが不活性化され分裂が停止しているが、受精卵では(分解した)Emi2に換わってUbe2SがAPC/C に結合し、APC/Cを活性化させることで細胞分裂を開始させる。

 九州大学大学院の佐方教授らは、脊椎動物の卵子が受精前に分裂を停止し、受精後に再度分裂がおこなわれる仕組みを明らかにした。

 脊椎動物の未受精卵は、排卵の後、受精がおこなわれるまで分裂を停止し、受精後に細胞分裂が開始する。この仕組として、Emi2というタンパク質が細胞分裂に必要不可欠な分裂開始因子に結合し、その働きを阻害していることは分かっていたものの、そのメカニズムまでは解明されていなかった。

 本研究チームは、アフリカツメガエルの卵子を使った実験によって、ある酵素(Ube2S)が細胞分裂に必要不可欠な分裂開始因子の活性化に重要な役割を果たしていることを明らかにした。受精卵の分裂開始メカニズムが解明されたのは初めてのことで、今回の成果は再生医学分野への応用や不妊の新しい診断や治療法の開発につながると期待される。

 なお、本成果は2014年4月28日に、Nature姉妹誌のオンラインジャーナル「Nature Communications」に掲載される。

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