憲法を超えた日米同盟の深化 あってはならない

2014年4月26日 22:01

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記事提供元:エコノミックニュース

環境の変化は憲法改正の根拠にはなりうるが、改正手続きを経ないで行使できるようにする根拠にはならない。

環境の変化は憲法改正の根拠にはなりうるが、改正手続きを経ないで行使できるようにする根拠にはならない。[写真拡大]

 日米共同声明。「米国は集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持する」また「米国は日米両国間の政策及びインテリジェンスに係る調整の強化を促進することとなる日本による国家安全保障会議の設置及び情報保全のための法的枠組みの策定を評価する」。

 米国にとって、アジア太平洋地域戦略での日本の役割分担の拡大と自国の負担軽減への環境整備が、昨年2月の日米首脳会談以来、安倍政権自身の自主的取り組みによって加速されていることを確認し、評価する声明にもなった。

 それは安全保障と日米同盟深化において、昨年2月の首脳会談でおそらく約したと思われる日本版NSCの設置、特定秘密保護法の制定、集団的自衛権行使容認への憲法改正を経ない解釈改憲の実現のうち、ふたつが実現し、集団的自衛権行使容認に向けた環境整備も進んでいることを確認し、評価を盛り込んだ文言とも受け取れる。

 日本共産党の志位和夫委員長は「米国は集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し、支持するとしているのは『検討』を『支持』といっているのであって、『行使容認』を『支持』するといっているのではない。 『容認支持』とする一部報道はミスリード」と指摘するが、そもそも、集団的自衛権は有するが現行憲法下では行使できないとしてきた歴代政府の方針を見直すための検討について「歓迎し、支持する」と表明しているのだから、容認への道を探ることを支持していると解釈する方が自然だろう。

 集団的自衛権の行使容認が日本の安全保障にとって、また国際社会にどのような影響を与えることになるのか、そして、その前段問題として、現行憲法の下で集団的自衛権の行使が容認される余地があるのか、憲法改正手続きを経ないで行使ができるのか、この点の根拠を国民に明確に示す責任が政府にある。

 安全保障環境が大きく変化したから、現況にあうように解釈するという説明では「法的安定性は大きく損なわれることになる」。環境の変化は憲法改正の根拠にはなりうるが、改正手続きを経ないで行使できるようにする根拠にはならない。

 憲法を超えた日米同盟の深化はあってはならない。これを肝に銘じることが必要だ。

 一方、共同声明で「日米両国は開かれた海を依り所とするグローバルな貿易網を有する海洋国家として航行及び上空飛行の自由を含む国際法の尊重に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調する」との文言を示し「日米両国は事前に調整することなく東シナ海における防空識別区の設定を表明するといった、東シナ海及び南シナ海において緊張を高めている最近の行動に対する強い懸念を共有する」と中国をけん制し、「日米両国は威嚇、強制又は力による領土又は海洋に関する権利を主張しようとするいかなる試みにも反対する」と中国、ロシアを視野においた文言、「尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する」との文言が盛られたことは日本として評価できよう。

 尖閣問題については国際法と歴史的事実に基づく根拠をより鮮明にし、外交努力で、国際社会の支持を得ながら粘り強く解決の道を歩むほかない。(編集担当:森高龍二)

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