大阪と京都サッカー専用スタジアム建設のもう1つの側面

2014年4月20日 20:15

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記事提供元:エコノミックニュース

 あと2ケ月でサッカー・ワールドカップを迎える。前回大会での本田圭佑選手の活躍は記憶に新しいところだ。Jリーグも今年から3部リーグにあたるJ3がスタートした。J1からJ3まで含めると52クラブとなる。これらの多くのチームはスタジアムを持っているが、柏レイソル、ジュビロ磐田以外は、自治体所有のスタジアムである。

 こうした中、本田選手の出身地である関西で2つのサッカー専用スタジアムの建設が行われようとしている。1つは、ガンバ大阪の本拠地、吹田市万博公園内の新スタジアム。4万人規模のスタジアムを現在のスタジアムに近接するエリアに建設する予定で、すでに昨年12月に着工されている。建設費約140億円を企業の寄付金、助成金によって賄おうとしており、3月時点で目標額には達しなかったものの、129億円が集まった。

 もう1つは、京都サンガの本拠地、亀岡市に建設予定の新スタジアム。2.5万人規模のスタジアムを亀岡駅近くに建設する予定である。京都府が主導しており、用地の無償提供を条件に誘致を希望する市町村を公募し、選考を経て亀岡に決定したのがこれまでの経緯。建設工事費は193億円に上るとされている。

 こうしたサッカー専用スタジアムは、陸上トラックを兼ね備えた競技場と違い、ピッチに近くなり、プレーは見やすく、臨場感も高まり、観戦者にはたまらないものとなって、満足度は確実にあがる。また、経済効果も期待されている。吹田市への経済波及効果が40億円、京都が14億円とされている。地域経済の活性化への効果も確実である。

 しかし、京都の場合、現在のスタジアム(京都市の西京極)周辺から亀岡に効果を付け替えるだけとの声もある。またスタジアムの維持管理費は地元自治体が負担することになる。年間平均月1、2回程度しか使用されない施設にもかかわらず年間1億円以上の予算が使われてしまう。その分、自治体は他の施策に予算が使えなくなってしまう。子育て施策、文化施策、教育施策が割を食うかもしれない。

 京都の場合、建設費は府民の税金から拠出される。ちなみに、収容人数が大阪の0.6倍にもかかわらず、建設費は1.3倍かかることへの疑問は置いておくとしても、道路建設など周辺の開発も予定されているので、さらに費用がかかる。

 しかも、田園地帯に新たに建設をすることによって、希少な生き物であるアユモドキの生息環境が影響を受ける。河川改修や整備によって生息地や産卵場所が消われた結果、すでに絶滅危惧種になってしまった。絶滅危惧種を絶滅させるかもしれない。環境保護、生物多様性が言われている時代に、である。

 サッカー専用スタジアムは、スポーツ振興はもちろん、人々のコミュニケーションを活性化し、住民のアイデンティティの確立にも貢献するだろう。しかし、他の側面について十分考えることも同時に必要だろう。(編集担当:久保田雄城)

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