【アナリスト水田雅展の為替&株式相場展望】7日~8日の日銀金融政策決定会合が焦点

2014年4月6日 14:37

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■サプライズなく通過後は15年3月期業績見通しに対して警戒感強める展開

  来週(4月7日~11日)の株式・為替相場は、7日~8日の日銀金融政策決定会合が焦点となる。今回の会合では追加緩和に踏み切る可能性が小さいだけに、結果発表後も期待感が継続するのか、それとも期待感が剥落して失望感に転じるのか、市場の反応が注目される。

  また前週末4日の米3月雇用統計を受けて為替はドル安・円高方向に傾き、米国株は大幅下落しただけに、日本の株式市場でも週初は軟調なスタートとなる。さらに日銀金融政策決定会合をポジティブサプライズなく通過すれば、その後は4月下旬から始まる14年3月期決算発表での15年3月期業績見通し対して警戒感を強める展開となりそうだ。

  前週の日本株は、日銀の追加緩和に対する期待感を強めてリバウンドの流れが継続した。4月1日発表の日銀3月短観では、業況判断指数(DI)が全規模全産業で22年ぶりの高水準となったが、3カ月後の先行き見通しが大幅に低下して市場予想を下回った。さらに2日に日銀が初めて公表した企業物価見通し調査(1万社調査)では、1年後の消費者物価指数(CPI)上昇率見通しが前年比1.5%となり、日銀が物価目標とする同2%上昇に届かなかったことを受けて、日銀の早期追加緩和に対する期待感が高まる形となった。

  米国市場では、ウクライナ情勢や中国の景気減速・理財商品デフォルトなどに対する警戒感が後退した。さらに週末4日の米3月雇用統計に対する期待感も強めて、株式市場ではダウ工業株30種平均株価とS&P500株価指数が取引時間中の史上最高値を更新する流れとなった。また米10年債利回り上昇などを受けて、外国為替市場のドル・円相場は1ドル=104円10銭近辺までドル高・円安方向に傾く場面があった。

  3日のECB(欧州中央銀行)理事会では、政策金利を現状の年0.25%で据え置くことを決定したが、理事会後の記者会見でドラギ総裁が「理事会で量的緩和を討議した」と明らかにしたことを受けて、ユーロ売りの動きが強まる場面があった。ただし影響は限定的だった。

  こうした状況を受けて、日本の株式市場では1週間を通して概ねリバウンドの動きが継続した。主要株価指数の週間騰落率を見ると日経平均株価は367円74銭(2.51%)上昇した。4月3日には終値で1万5000円台を回復した。TOPIXは29.37ポイント(2.48%)上昇した。3月24日から4月3日まで9営業日続伸し、3月31日には終値で1200ポイント台を回復した。

  そして日本市場終了後の週末4日に発表された米3月雇用統計では、失業率は6.7%となって2月と同水準だった。非農業部門雇用者増加数は19.2万人増加となって市場予想の19.5万人~20.0万人をやや下回った。1月は12.9万人から14.4万人へ、2月は17.5万人から19.7万人へ上方修正され、3月は2月とほぼ同水準となった。

  この結果に対して、雇用情勢は着実に改善しているが本格的な改善というほどでもないとして、米FRB(連邦準備制度理事会)の緩和的な金融政策に変化はないとの見方が優勢になり、債券市場では米10年債利回りが低下し、外国為替市場ではドル安・円高方向に傾いた。株式市場は上昇してスタートしたものの、利益確定売りの流れとなって大幅下落に転じた。CME日経225先物(円建て)も1万4875円まで下落して終了した。為替はリスクオフの動きを強めて1ドル=103円30銭近辺、1ユーロ=141円40銭近辺となった。

  来週は、国内要因で7日~8日の日銀金融政策決定会合が最大の焦点となるが、前週末4日の米国市場の結果を受けて、週初7日の日本株は軟調なスタートとなりそうだ。前々週および前週の日本株の大幅上昇は、日銀金融政策決定会合に向けて追加緩和に対する期待感が支えた印象が強く、危うさいっぱいのリバウンドだっただけに、来週は逆の反動に注意が必要となるだろう。

  日銀の追加緩和は7月以降という見方が優勢だが、消費増税による景気の落ち込みを緩和するために予防的な早期追加緩和に対する期待感も根強い。株式市場では消費増税の影響に対する警戒感をかなり織り込んだと考えられるだけに、今回の会合で追加緩和に踏み切ればポジティブサプライズとなるが、可能性は小さいだろう。そして追加緩和が見送られた場合でも期待感が継続するのか、それとも期待感が剥落して失望感が優勢になるのかが注目される。為替は1ドル=102円~103円近辺を想定するが、追加緩和見送りであれば円高方向に傾く可能性もあるだろう。

  そして日銀金融政策決定会合通過後は重要イベントの谷間となり、4月下旬から始まる国内14年3月期決算発表での主要企業の15年3月期業績見通しに焦点が移る。15年3月期は平均で14年3月期比10%程度の増益という見方が優勢のようだが、消費増税の影響による国内販売数量減少、円安一服による増益要因としての円安メリット縮小、賃金上昇や原材料・燃料価格上昇といったコストアップ要因などを考慮すれば、14年3月期比10%増益達成に向けてのハードルは高い。

  もちろんセクターや個別企業の戦略によって異なるが、主要企業は期初時点では保守的な見通しを公表する傾向が強いことも考慮すれば、全体として市場の期待を上回る強気見通しが得られる可能性は極めて低いだけに、日銀の追加緩和という追い風がなければ市場が警戒感を強める可能性もあるだろう。

  海外要因では、ウクライナ情勢に関しては米ロの外交的駆け引きが続くが、最悪の事態に向かう可能性は小さいとして過度な警戒感は後退している。中国の景気減速・理財商品デフォルト(債務不履行)に対する懸念に関しても、引き続き売り仕掛けの材料とされそうだが、すでに中国政府の景気刺激策に対する期待感が優勢になっているため影響は限定的だろう。

  なお4月4日に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、日本株運用の見直しで、不動産投資信託(JREIT)への投資開始やインデックス運用の多様化に着手することを発表した。需給面での支援材料として期待されるだろう。

  株式市場での物色動向としては、3月期決算発表を控えて主力銘柄が手掛けにくくなり、材料系銘柄や消費増税の影響を受けにくい好業績の中小型株に対する物色が強まりそうだ。様子見ムードで売買代金が盛り上がらない可能性もあるだけに、週末11日の4月限オプションSQ(特別清算指数)算出に向けての思惑にも注意が必要となり、新興市場への資金流入が増加するかも焦点となる。消費増税の影響を受けにくいセクターとしては、公共投資関連、ゲーム関連、再生エネルギー関連などが注目されるだろう。

  その他の注目スケジュールとしては、7日の日本2月景気動向指数、独2月鉱工業生産、8日の日本3月景気ウォッチャー調査、インドネシア中銀金融政策決定会合、米2月消費者信用残高、米3月中小企業楽観度指数、9日の米2月卸売在庫、米FOMC(連邦公開市場委員会)3月18日~19日開催分の議事要旨公表、9日~10日の英中銀金融政策委員会、10日の日本2月機械受注、中国3月貿易統計、米3月輸出入物価、米3月財政収支、10日~11日のG20財務相・中央銀行総裁会議、11日の日本3月マネーストック、日本3月企業物価指数、中国3月PPI・CPI、米3月卸売物価指数、米4月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。

  その後は4月16日の中国第1四半期GDP、24日~25日のオバマ米大統領の訪日、29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の日銀金融政策決定会合・展望リポート、米第1四半期GDP速報値、5月2日の米4月雇用統計、8日のECB理事会、20日~21日の日銀金融政策決定会合などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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