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ピンク・ネブラ vol.16
Image credit: Planet Labs[写真拡大]
「プラネットラボ社インタビュー」
ISSから28基のキューブサットを放出!全地球をカバーする世界最大の小型衛星地球観測コンステレーション。
2月10日にプラネットラボ社共同創設者・CTO(最高技術責任者)クリス・ボシュイゼン氏のインタビューを行った。ボシュイゼン氏はNASAエイムスリサーチセンターでフォーンサット衛星開発に従事。その後独立して2010年にプラネットラボ社を共同創設。以来、次々と衛星を打上げ、鮮やかに取組みを進めている。現在の従業員は40人、この3年間にそれ以上の数の衛星60基を作った。
--ここ数年間、宇宙カンファレンスなどで何回も会う機会がありましたが、詳しくお話伺うのは初めてですね。まずは、会社設立の経緯や取組みについてお伺いします。
2010年のクリスマス直前に会社を創設、幸運にもアップル社のスタート時と同じようにシリコンバレーのガレージを拠点に共同創設者のウィルと2人で活動を開始した。もう1人が6か月後に加わった。家族や友人から資金を借りてスタートしたが、ほどなく3Mドルをベンチャーキャピタル(VC)から調達することができた。最初の雇用はNASA出身者を含む4~5人で、プロットタイプを開発した。1年後にラウンドAの11Mドルの資金調達に成功、商業コンステレーションのフロック1(28基)を開発した。
試験機ダヴ(Doveはハトの意味)1と2は、打上げの遅れから偶然にもロシアとアメリカから同じ日、2012年4月21日に、40分違いで打ち上がった。ダヴ3と4は2013年11月にロシアから打ち上げられた。最初の商業機のフロック1は2013年12月に打上げを依頼したナノラックス社に引き渡し、2014年1月29日にアンタレスロケットでISSに打ち上げられた。
共同創設者のウィルとは学生時代に国際宇宙会議で最初に出会った後、同様の機会で何度も会った。Ph.D.終了後ウィルが2007年に、自分も翌年NASAエイムスリサーチセンターに入り、2~3年衛星技術開発部署に所属した。技術とビジネスの良い面も悪い面も学び、起業に必要なことは全てNASAで習得できた。
--エイムスリサーチセンターはインキュベーション的な機能もあるんですね。次に衛星技術や能力、打ち上げ手段の革新性についてお伺いします。
最初の衛星ダヴ1は150kmの軌道に打ち上げられ、衛星寿命は6日だった。ダヴ3と4は高高度に投入されたこともあり10年の寿命となるが、実験認可を取得した実験目的の衛星。ダヴ28基のフロック1で商業サービスを開始する。ISSからの放出後、寿命は1年で、順次入れ替えていくが、先の計画はまだ決まっていない。
衛星の能力は、ダヴ2からダヴ3で自社開発のシステムに入れ替えたことによりダウンリンクの能力は20倍に、ダヴ3からフロック1でデータ積載容量は2倍になり温度安定性が増すなど向上している。高性能な電力システムでゆとりある電力が得られているうえ、消費電力の少ない高効率のシステムとなっているため電力は十分足りている。
打ち上げ手段については、試験機ではスペースフライトサービス社やISIS社、フロック1ではナノラックス社のワンストップサービスを利用している。打ち上げコストはそれほど問題でないと思っているが、問題があるとしたら打上げ遅延。数kgの衛星1~2基を低価格で打上げるナノロンチャーが開発され、衛星を2週間で引き渡し、すぐに打ち上げることが可能になればと期待している。
--ダヴは3Uのキューブサットとはいえかなり高性能、寿命は短いけど高頻度で最新技術にバージョンアップできるということですね。一方、画像データサービスについてお願いします。
画像データやデータサービスについての詳細は公表していない。刻一刻と多くのことが起こっている地球をダヴ28基でとらえる。全地球を常時継続的にカバーしていることが最大の強みになっている。グーグルマップは約36か月前の古いデータ。場所によっては10年~15年の古いデータもある。
有料データサービスがビジネスモデルである。データ加工サービスは顧客次第で行っており、サービス内容によって値段を設定している。今の段階では無料提供は考えていない。サービス開始前から顧客は支払いを行っており、3か月前から利益を得ている。顧客については公式発表していないが、米国だけでなく海外とも契約している。
--会社設立から短期間でマーケットインできた要素として技術・マネージメント、市場、資金などについて教えて頂けますか。
政府からの支援を受けず、VCからの資金調達で、開発からサービスまで行っている超商業主義。VCからの資金により計画を速く進めることができた。全地球マッピングという全く新しいカテゴリーの市場を創出していることがVCに評価されている。また、それを実現するための衛星、サービスを含めた技術を保有している。
--スタート時の3Mドル、2013年7月に13Mドル、12月に52Mドル、そして2014年2月と次々と資金調達に成功しました。
シリコンバレー投資家は破壊的技術によって市場に革新が生まれることに投資する。シリコンバレーの投資はラウンドAやBを経て、Cで黒字になれば良いと、リスクに寛大である。シリコンバレーであることは資金調達においてとても重要なことであり、他の場所ではリスクがあると思われ、速くは進まなかったであろう。一般に投資家は、チーム、実績、実行能力を評価する。スタート資金で得た3Mドルで試験衛星を打上げ、いつも衛星が宇宙にあることを見せることで実績を作りラウンドAの13Mドルを獲得した。ラウンドAの13Mドルでフロック1を実行することで能力実行の段階となるが、これにより52MドルのラウンドBを得た。
--個人としてこの先目指すもの、私たちへのメッセージをお願いします。
物心ついたときから宇宙探査や有人宇宙飛行に強い関心をもっていた。それは今でも変わらず、30年後も、一生宇宙開発に携わっていたい。ずっと同じ企業で宇宙プロジェクトを発展させていくのか、新たに起業していくかなどいろいろな道があるが、宇宙から離れることは考えられない。自分で衛星を作るなど、今すぐに、とにかく何かを作ること、行動を起こすことを勧めたい。
--プラネットラボ社の小型衛星28基をISSから放出したナノラックス社CEO(最高経営責任者)ジェフ・マンバー氏からのメッセージ
NASAやJAXAとの協力で、衛星放出することでISSという軌道上プラットフォームを使う価値が示せたことにわくわくする感動を覚えた。本格的なISS利用にこのプロジェクトで貢献できたことを嬉しく思っている。
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