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理化研究所、躁うつ病治療薬剤の作用メカニズムの一部を解明 副作用の回避につながる可能性
躁うつ病は、双極性障害ともいい、躁状態とうつ状態の極端な「気分の波」が繰り返し起きる精神疾患だ。厚生労働省では、日本には数十万人の患者がいると見積もっているという。その治療には、気分の波を穏やかにする「気分安定薬」が用いられるが、その効果のメカニズムは半世紀以上も未解明であった。今回、独立行政法人理化学研究所は、気分安定効果がどのような仕組みで発揮されるかというメカニズムを解明した。
気分安定薬にはリチウムという薬剤が使われる。これまでは、「リチウムが細胞内の酵素の働きを抑制し、細胞内の情報のやり取りを調節している」との仮説がいくつかあった。その一つが「イノシトール枯渇仮説」という。栄養ドリンクなどにも使われているイノシトールという物質を作り出す酵素「イノシトールモノフォスファターゼ」は、リチウムによって直接その働きが抑制される。その結果、細胞内のイノシトールの量が減少(枯渇)し、気分の安定に効果があるのだとしている。
理研の研究者らを中心とした共同研究グループは、このイノシトールモノフォスファターゼ遺伝子の一つ「Impa1」の機能を欠損させてイノシトールの働きを抑制した「細胞内イノシトール枯渇マウス」を使った。その行動を観察した結果、このマウスは正常なマウスと比べ明らかに過剰な活動性を示した。このような活動性の変化は、リチウムを正常マウスに与えた場合に起きる変化と類似していたという。つまり、脳内のインシトール不足が「躁状態」を引き起こしていると判断。このことから、リチウムの気分安定薬(抗うつ薬)としての働きは、酵素のイノシトールモノフォスファターゼの働きを抑えることであると推察できた。
一方、妊娠中の母マウスから出産直前の段階で、細胞内イノシトール枯渇マウス胎児を取り出したところ、下あごがほとんど形成されていなかった。そこで、母マウスにイノシトール溶液を飲ませたところ、その異常が回復したという。このことから、あごの形成異常はImpa1遺伝子の欠損によるイノシトール不足によるものと結論づけた。
これまでの実績からリチウムの気分安定薬として効果は検証済み。しかし、有効量と中毒を起こしてしまう量が近接しているため、血中濃度の頻繁な測定が必要。渇きや手の震えなどの副作用もあるという。もし、イノシトールモノフォスファターゼの働きだけを抑えることが可能な薬剤があれば、これらの問題を回避できるかもしれないという。
理研では今回の成果を治療薬の標的の発見や、気分障害そのものの成り立ちにつなげていきたいとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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