「親亀コケても子亀は一人立ち」の親子上場株にグループ再編の投資妙味=浅妻昭治

2014年2月10日 11:06

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  「ああ、やっぱり」というのが、偽らざる感想であった。ソニー <6758> が、今年2月6日に発表した今3月期業績の下方修正、純利益の赤字転落である。同社の業績下方修正自体は、今期も、前期に続く四半期決算発表のたびごとの3回目の下方修正で、慣れっこになっていた。「ああ、やっぱり」と頷けたのは、そうではなく、同社の連結子会社のソニーフィナンシャルホールディングス(SONYFH) <8729> が、同日ほぼ同時刻に開示した今3月期第3四半期の決算速報と3月通期業績の上方修正との対比にある。

  実は、SONYFHは、親会社が昨年8月、10月と今期業績を下方修正するたびに、まったく今回と同様に同日、同時刻に決算速報も発表し、親会社と真逆の好業績が続いていることをアピールしてきた。もちろん、親会社の決算発表内容でも、SONYFHが展開している金融事業は好調に推移していると説明はされているのだが、同社の同日同時刻の決算開示には、親会社の業績悪に巻き込まれて株価がツレ安することへの警戒感、もっと極論すれば苛立ちが垣間見たれるようであったから、今回もまた、「ああ、やっぱり」と両社の決算内容を見比べた。「親亀コケたら子亀もコケる」のは世の常識だが、これを覆し「親亀コケても子亀は一人立ち」の構図を敢えて浮かび上がらせようとする子会社のIR(投資家広報)の決意みたいなものが読み取れるのである。

  幸いなことに、今回のソニーの3回目の業績下方修正は、株価が、悪材料出尽くしとなって3日続伸となり、SONYFHも4日続伸となって、大事には至らなかったようだが、ことほど左様に親子上場会社の業績・株価動向は、的確に予測して先取りするのがなかなか厄介なファクターを含み勝ちなのである。そしてこの不透明性、不確実性が、ことによると、株価の押し上げ材料になるケースにつながる場合があるのが、投資銘柄を選別する上での面白さにもつながる。

  例えば、今年1月28日に豊田通商 <8015> は、連結子会社のトーメンエレクトロニクス <7558> の株式公開買い付け(TOB)を発表し、子会社の株価は、ストップ高を交えてTOB価格1650円をサヤ寄せして38%高の急伸を演じた。このTOBをキッカケに豊田通商グループの同じく電子部品商社のトーメンデバイス <2737> 、エレマテック <2715> にグループ再編思惑が波及してツレ高、同様に急伸を演じた。

  親子上場問題は、東京市場のグローバル化が進むなか、海外市場にはない日本独特の上場形態で、外国人投資家も、親子間の利益相反に警戒感を強めているといわれ、いずれグループ再編が加速されるとの見方も強まっている。今回のソニーとSONYFH、豊田通商とトーメンエレクトロニクスではないが、この再編思惑に業績動向が絡むと、親子上場会社には潜在化していた意外な株高材料が表面化する可能性も出てくる。

  全般相場は、前週末7日の米国市場でNYダウが、165ドル高と大幅続伸し、為替相場もやや円安となり、今週は、これをテコに売り方の買い戻し主導で戻りを試す展開が想定される。しかし、米国の金融緩和策の方向性や新興国経済の先行き不透明化などで、なお紆余曲折が懸念されるなか、親子上場会社に投資照準を合わせてリサーチしてみるのも、投資妙味株の発掘につながるかもしれない。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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