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「良貨は悪貨を駆逐する」か?Core30のサプライズ銘柄が「アベノミクス」の1周年相場をリード=浅妻昭治
【浅妻昭治のマーケット・センサー】
まさに「グレシャムの法則」の「悪貨が良貨を駆逐する」ではないか?前週末にピークを過ぎた3月期決算会社の4~9月期(第2四半期・2Q累計)業績の発表動向である。3月通期業績の上方修正銘柄、下方修正銘柄、期初予想の据え置き銘柄などさまざまだったが、この株価感応度をみると、まだ瞬間風速段階だが、下方修正の「悪貨」の株価インパクトが強過ぎて、「良貨」の上方修正銘柄の存在感が霞み勝ちで、株価波及度を減衰させてしまっている。当然、日経平均株価は、上値が重くなって、25日移動平均線水準でもみ合う膠着感を強めた。
例えば、オール・ジャパン銘柄の「TOPIX Core30」の構成銘柄の30銘柄は、2月期決算会社のセブン&アイ・ホールディングス <3382> を除いて、連休前の前週末1日までに21銘柄が、決算発表を終わっているが、このうち業績予想を開示しない野村ホールディングス <8604> を除いて、通期業績の上方修正銘柄が4銘柄、下方修正が7銘柄、据え置きが9銘柄となっている。下方修正銘柄は、もちろん株価は急落、ソニー <6758> のように、2003年4月に起こった「ソニー・ショック」の再来で全般相場を暴落させないかと心配されたほどで、同業他社のパナソニック <6752> の上方修正の好感高の足を引っ張った。
据え置き銘柄も曲者である。市場コンセンサスを上回ったか下回ったかでフルイにかけられ、市場コンセンサスに届かなければ、利益確定売りが先行、高安マチマチとなり、業績予想を開示しない野村ホールディングス <8604> も、この一角で株価は「悪貨」となっている。株価が上昇した「良貨」は日立製作所 <6501> と通信キャリア3社のKDDI <9433> 、NTTドコモ <9437> 、ソフトバンク <9984> の4社のみにとどまった。
もう直ぐ野田佳彦前首相が、解散・総選挙を表明したサブライズをキッカケにスタートした「アベノミクス相場」の1周年を迎える。確かに、株価水準そのものは、日経平均株価が、8664円から1万4000円台と6割も高い水準にいるが、相場のムードそのものは様変わりである。昨年11月の解散・総選挙表明の野田サプライズもなければ、「アベノミクス相場」の熱気も感じられない。「アベノミクス相場」の初動段階では、むしろ「良貨」より「悪貨」の方から動意付き、値動きも軽く、「八百屋の店頭に並ぶカブ以外は、株は全部カイ」と投資家心理を煽ったこともずーっと昔、昔のように印象が薄れている。
ただ決算発表はピークを過ぎたが、諦めるのはまだ早いとの見方は、確かにあることはある。Core30銘柄でも、とくに明6日に2Q累計決算を発表予定のトヨタ自動車 <7203> へのサプライズ期待はことのほか高い。しかし、これも同じCore30銘柄で露払い役としてすでに2Q累計決算を発表したデンソー <6902> が、7月に続いて3月通期業績を再上方修正したものの、市場コンセンサスを下回ったとして株価的には「悪貨」となってしまった。トヨタの2Q累計決算発表が、「悪貨」の渦のなかに呑み込まれてしまうのか、それとも「グレシャムの法則」の逆で「良貨が悪貨を駆逐する」サプライズとなるのか、注目されることになる。
要するに「アベノミクス」の1周年相場は、手持ちの「良貨」の手駒が限られ、手詰まりのなかで展開されるということである。将棋のプロ最強のA級棋士ではないが、手駒の「良貨」をうまく差し回し、有効活用しつつ細い攻めをつないで、好パフォーマンスを示現する以外にはないということに違いない。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
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※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。
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